授業にはその都度「本時の目標」を設定して臨みますが,実際に生徒が何を学んだかについては文字にさせておくのが望ましいです。新しい観点別評価,特に「主体的に学習に取り組む態度」については,自らの学習を調整しようとする側面や粘り強い取組を行おうとする側面を測るため,なるべく多くの評価材料が必要になるからです。 例えば毎回の授業についてG Suite for EducationのClassroomで「今回の授業で学んだこと,考えたこと」といった内容で毎回課題を出しておき, GIGAスクール構想のGIGAとはGlobal and Innovation Gateway for All の略語です。つまり,全世界的かつ革新的な入口が全ての生徒に対して開かれていなければなりません。したがって新しい取り組みをする中で,ICT機器や端末の取扱いについていけなくなる生徒を出さない工夫が必要になります。またその上でインクルーシブ教育の視点からは,今まで学習に対して困難を抱えていた生徒の支援としての機能も求められているとも言えます。デジタル教科書を使用したいくつかのアイディアを以下にあげます。❶電子黒板にデジタル教科書を表示し,授業で現在取り組んでいる部分を選択,拡大表示する。 読むこと,聞くことが苦手な生徒に視覚的に訴えることに加え,集中力を欠きやすい生徒にとっても,学習内容に戻ってこられる仕組みがあるのは有効です。「◯行目に線を引く」などの指示が通りにくい場合も,電子黒板に表示した教科書に実際に線を引くととてもわかりやすいです。❷生徒の端末にデジタル教科書を表示し,総ルビ表示や本文読み上げ機能で個別にサポートする。 初出の漢字や言い回しなど,読むことが苦手な生徒や外国にルーツをもつ生徒がいる教室を想定した取り組みです。生徒端末にイヤホンを挿すなどして,他の生徒が課題に取り組んでいる間にもデジタル教科書の読み上げ機能を利用するようにすれば,個別に読み方を確認することができます。 このような使用方法は,通常学級における合理的配慮を進めるだけでなく,全ての生徒にとって授業内容の理解がより容易になり,苦手意識を取り除く作用があります。生徒自身が興味をもった部分について学びを進める他,理解の不十分な部分に戻って学びを確認する機会を確保することもICT教育の果たす重要な役割であると考えます。次の授業までに提出させるようにすれば,評価やフィードバックに役立ちます。また個別の質問にも答えやすくなります。生徒にとっても内容を定期試験前などに見直せれば,学んだことを自分で振り返ることもできます。実践名「主体的な詩の読み手になるために~現代詩サロンに参加しよう~」概 要❶授業の最初の5分程度を「現代詩を読む時間」とする。G Suite for Education※のGoogleドキュメントを用い,生徒の端末に詩を表示する。❷指導者が朗読し,生徒は一言感想や疑問点をドキュメントの2枚目に書き込む。❸他のクラスともファイルを共有し,いつでも追加で書き込めるようにする。❹1ヶ月の間に紹介した12~15篇の詩の中から1つを選び,他のクラスの生徒と交流した内容も踏まえて,鑑賞文を書いて提出する。 授業で教科書に掲載されている詩を扱う場合,言葉の意味を正しく理解し,比喩やその他の表現技法について学び…といった手続きを踏んで進めることが多いことでしょう。しかしこの実践の場合は,正しい読解を求めるというよりは,自分達でテーマや疑問点を出し,それに対する考えを表明することで主体的な読み手を目ざすという部分にねらいがあります。したがって,選定する作品については萩原朔太郎,田村隆一,吉岡実,入沢康夫,安東次男,鮎川信夫など,生徒が「背伸び」して読みたくなる詩人を選ぶと,より興味関心を高められると実感しています。 また,今までこの実践では,気に入った詩を1つ選んで詩ごとにグループを作り,疑問点について意見を交流してから鑑賞文を書かせていました。しかし,生徒ごとに興味をもつ詩に偏りがあるため,人数にも話し合いの深まりにもばらつきが生じていました。しかしファイルの共有が可能になったことで,より多面的な読解が可能になりました。生徒からの質問および感想の集め方について支援を要する生徒への対応と,授業についていけない生徒を出さないための工夫※2021年2月よりGoogle Workspace for Education Fundamentalsと名称変更。3デジタル時代の学びのカタチー教科の視点 国語特集
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