「中学教科通信」2021年5月号 ウェブ版
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 平成29年告示の学習指導要領では,前指導要領と比較して「持続可能な社会」と関連づけられた内容が,より多く取り扱われるようになりました。社会科に限らず,技術・家庭科,道徳などの教科でもその傾向が見られます。地球規模の諸課題を教科横断的に探究するにあたり,地理・歴史・公民的分野からなる社会科は,その中心的役割を担っていると言えます。 また社会科の特性においては,課題どうしの複雑な関係について考察することも可能です。例えば昨今関心が高まる感染症対策は,持続可能な開発目標(SDGs)における目標3「すべての人に健康と福祉を」に位置づけられます。ここでさらに,感染症対策について追究することで,人々の公平性を阻む貧困や不平等の問題を相互に関連づけて考察することができます(図1)。 生徒は,「誰一人取り残さない」というSDGsの理念を互いに共有することで,持続可能な社会の創り手として,より成長していくことが可能です。その際,ICTの有効な活用によって,立体的で複雑な学習をより効率的に実践することができます。 授業者は,Googleフォームなどのアンケート機能を使うことで,大量のテキストや数値データを瞬時に集約することができます。協働的探究学習の学習成果物はかなりの量になりますが,単元の評価をはじめ,テキストマイニング(図2)やグラフによる分析まで効率よく行うことができます。 生徒はICTを活用して,情報収集のほか,多様な思考や表現を共有したり,発表スライドの共同編集を円滑に行ったりすることができます。一方で,図や表を用いた思考整理,ポスターセッション,紙上討論のように,紙のノートや模造紙も生徒の思考を深める媒体として健在です。単元の目標に応じた学習活動を構成する際,これまでに実践された手法も取り入れながらICTと紙媒体の併用も視野に入れると,より活動の幅も広がります。 2019年に,町田市立堺中学校の3年生(187名)を対象に,単元「私たちがつくる持続可能な世界」(公民的分野)を学習しました。その実践事例を紹介します。(1)本単元の概要 導入部で,副教材を用いてSDGsの概要について説明しました。生徒はその内容を受けて,持続可能な世界を実現するために何をするべきか考察し,Googleスライドにまとめて発表しました。SDGsの理解を深め,「地球規模の諸課題の解決のために社会に参画しようとする態度を育む」ことを目標に,9時間扱いで実践しました(図3)。(2)Googleフォーム,スプレッドシートの活用 による,単元に即した実態把握 生徒は探究テーマを選択し,Googleフォームで回答します。その回答をGoogleスプレッドシートに集約し,整理・分析を行いました。 結果は,回答数183名のうち,単独のテーマとしSDGsを学ぶための協働的探究学習を中核としたICTの活用国立市立国立第一中学校教諭 古ふる田た 一かず博ひろ はじめに学習活動の構成とICT協働的探究学習を中核としたICT活用の実践例図1 地球規模の課題とSDGs目標の多角的な探究の例図2 テキストマイニングで頻出用語を抽出した結果6デジタル時代の学びのカタチー教科の視点 社会特集

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