「中学教科通信」2021年5月号 ウェブ版
7/17

 これまでの公民的分野と地理的分野での実践から,ESDと対話的な学びの親和性の高さを実感しています。生徒は,対話的な学びを通して,地球規模の複雑な課題の解決や持続可能な社会の構想のために,他者と連携を深めることの大切さを学習していました。単元の流れのなかにICTを介在させることで,より実践効果の高い指導につなげることができます。指導計画が実践として動き出し,軌道に乗ったあとは,生徒の思考力に託して,そこから生み出される議論を大切にしたいと考えています。んを節約したり,画像・グラフなど参考資料のサイズを簡単に調整したりできるというメリットがあります。模造紙はポスターセッションの活動への接続に適していますが,単元の構成によってはJamboardがより効果的であると考えています。(4)Googleスライドを使った発表 生徒は「持続不可能な世界」の予測をもとに,持続可能な社会を実現するために何が必要か考え,Googleスライドにまとめました。その際スピーカーノート(発表用メモ)も活用し,発表内容と時間を調整しながら,スライド作成に取り組みました。 スライド作成が間に合わない班は,自宅からスマートフォンやタブレットでログインして,Googleスライドの共同編集をしていました。生徒は,互いにSNSを使ってコミュニケーションを取りながらスライド作成を行うなど,コロナ禍以前の事例ではありますが,テレワークさながらの取り組みをしていました。 発表の時間は生徒同士の対話的な学びを促すことを心がけました。Googleスライドを使った発表内容に対して,聞き手は批判的思考(図3-5)をもとに感想や意見を伝えたり,矛盾点などを指摘したりすることができました。ては最も多い19名が,当時話題だった「海洋プラスチック問題」を選択しました。また,学校に行けない子どもや乳幼児の死亡率,児童労働の問題など「子どもの成育環境に関連するテーマ」を選択した生徒は,女子生徒のうち44%を占め,男子生徒が7%であったのに対して高い関心を読み取ることができました(性別は生徒の申告)。Googleフォームを利用して,クラスや学年単位の傾向を迅速に読み取ることで,学習内容に即した生徒の実態の把握や,テーマ別の班編成が円滑に実施できました。(3)Google Jamboardを用いた協働的探究 学習 「持続不可能な世界」について,海洋プラスチックや地球温暖化,貧困,子どもの教育に関する問題などのテーマ別の班に分かれ,未来予測を立てました。ポジショニングマップやフローチャート,分類図,KJ法など複数の思考ツールを提示して班ごとに選択させ,生徒は話し合いを重ねながらふせんの配置や事象の関連づけを行いました。生徒は地球規模の課題の解決について,班内でも違う意見や様々な見方・考え方に直面し,話し合いながら班としての意見の調整を図っていました(図3-2)。 一人一台の端末が整備される現在では,模造紙をGoogle Jamboardに代えることもできます(図4)。Jamboardは,感染症予防の面で優れ,ふせさいごに図3 協働的探究学習を中核としたICT活用の実践例(2019年)❶Googleフォームでアンケートを取る。 授業者はアンケートをもとに,Google スプレットシートで分析・班編成を行う。❷インターネットで情報収集する。❶テーマ別の班に分かれて未来を予測 する。❶テーマ別の班に分かれてGoogle  スライドの「共同編集」を行う。1. テーマ選択・事例調査2. 「持続不可能」な未来予測4. 「持続可能な社会」の構想5. 「持続可能な社会」の発表❶Googleスライドで発表する。❷質疑応答で聞き手は,発表者のよい点 や矛盾点,盲点などを指摘する。6. 単元の振り返り3. ポスターセッション❶質疑応答では聞き手から意見や質問を  出す。〈論理的思考〉〈批判的思考〉〈批判的思考〉〈論理的・創造的思考〉❶Googleフォームでアンケートを取る。❷授業者は単元前後のアンケートから評 価と単元の分析を行う。※Googleスプレッドシート,テキストマイニング,自動生成されたグラフを使用。図4 模造紙によるポジショニングマップ(左)とGoogle JamboardによるKJ法(右)7デジタル時代の学びのカタチー教科の視点 社会特集

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る