小学校でもプログラミング教育がスタートし,Scratch※を用いた実践も広まってきているようです。音楽とプログラミングの関係について,授業で紹介することにしました。 まず始めに,音符や休符は,長さの割合によって別々の記号で示されており,これらを組み合わせてリズム・パターンや旋律をつくることができる,という音楽のきまりの基本的なことを示しました(図1)。4分音符を「1」とした場合,付点4分音符は「1.5」という数値で示すことができます。8分音符ならば4分音符の半分の長さになるので「0.5」で,16分音符は「0.25」となります。こうした長さの割合について知ると,「音楽って意外と数学的な考え方でできている」ということに気づくことができます。図1. 音符と休符『新版小学校音楽科教育法』教育出版,2018年,p.182に筆者が加筆(編集部にて一部表を作成) 上記の考え方に基づき,Scratchにて音を設定していきます。Scratchの音を挿入する機能においては,低音から高音に向けて,黒鍵を含めて連続した数字が振られており,各音について長さや音色を設定できるようになっています。 ごく簡単な具体例として,クマ・鳥・雲のアニメーションと音を連動させたものを紹介します。 一匹のクマがのっしのっしとゆっくり歩いている様子について,低音のド(36)・ソ(43)の4分音符(1)でマリンバの音を当てはめ,足音をイメージしたリズム・パターンとしました。続いて,鳥が楽しげに鳴きながら飛んでいる様子について,中音域ミ・ミ・ソ・ソの8分音符(0.5)のエレキギターの音を設定しました。空に白い雲が風に揺られて進んでいる様子について,高音域のソ・ラ・ソ・ラで16分音符(0.25)のオルガンの音をあてはめました。クマ・鳥・雲の各アニメーションについて,「次のコスチュームにする」という機能を追加しておくと,動きのバリエーションを増やすことができます。さらに,「もし端についたら跳ね返る」「回転方法を左右のみにする」「繰り返し」などの機能を設定し,スタートボタン(旗印)を挿入して完成です。図2. Scratchの画面 今回は,低音域・中音域・高音域の音を各アニメーションにあてはめ,さらに,4分音符・8分音符・16分音符の違いがわかりやすい事例を提示しました。Scratchは,たとえ読譜や記譜があまり得意でなくても,楽器演奏が苦手でも,直感的に音楽づくりに取り組むことができるツールであると感じました。 新型コロナウイルス感染症予防対策として,飛沫感染の可能性がある歌唱や合奏などの活動が制限されてきました。こうした中で,デジタルツールを活用した新たな音楽学習の形を模索していくことにより,改めて,音楽の楽しみ方やよさに気づくことができました。おわりに※Scratchは,MITメディア・ラボのライフロング・キンダーガーデン・グループの協力により,Scratch財団が進めているプロジェクトです。https://scratch.mit.eduから自由に入手できます。「Scratch」を用いたプログラミング11デジタル時代の学びのカタチー教科の視点 音楽特集
元のページ ../index.html#11