めあてをもって練習するには,運筆についての理解も大切になってきます(❺❻)。 そこで実物投影機などを用いて手元を大きく映し出し,実際の運筆の様子を視覚的に見せることは,筆使いを理解させるうえで大変有効になります。 ただ,「教師が書いて見せなければ」と思うと,「私は筆を持って書くのが実は苦手で……」と尻込みされるかたもいらっしゃるかもしれません。 そこで,誤解を恐れずにお伝えしたいのは,「先生は筆を持たなくても,書写の指導はできますよ。」ということなのです。大きな水書板を用意せずとも! 先生がたのお手元にある指導書に付属しているDVDには,運筆をわかりやすく示した動画が,それぞれの課題文字について用意されています。 基準を確認して課題を把握したり,練習の際に何度も繰り返し流したりするなど,さまざまな場面で活用でき,正しい筆使いをスムーズに見せることが可能です。 デジタル教科書が導入されていれば,「まなびリンク」で先ほどの運筆の動画などにすぐに飛ぶこともできます。また,教師用のデジタル教材には,単元によって内容に関連したデジタルコンテンツも用意されています。この動画を,話し合いの材料や児童の意見の価値づけとしたり,意欲を喚起したりするなど有効に活用したいものです。自分が書いた文字とを照らして,自分の課題を見つけていきます。 現在ではこのとき,半紙に書かれた試し書きに,自分で赤でペンなどで気づいたことや課題を直に書き込んで意識するという方法を提案していますが,児童がタブレットを持っていれば,試し書きをあらかじめ撮影しておき,自分の端末のデジタル教科書の基準文字と並べて比較する,という使い方ができます。機能によっては,批正した内容を画面上で書き込むこともできるでしょう。 練習の際(❻)には,運筆の様子を確認したいときに自分の手元で繰り返し視聴することもできます。また,同じくまとめ書きとの比較もわかりやすくできるようになります(❼❽)。ポートフォリオとしての役割も果たし,一単位時間だけでなく,個人の中長期的な成長を残していくといった使い方が期待されます(❾❿)。 次に,これから児童が一人一台端末を持ち,インターネットで相互につながることのできる環境となっていくなかでのICT活用についてご提案します。 先ほど述べた自己批正(❹)や課題把握(❺)の場面では,確認したポイントをもとに基準文字と,個別学習の深まり 課題解決型学習としてのアクティブな活動がたくさん行われる書写は,実はICTと相性がよい場面も多くあります。しかしながらICTは目的ではなく,よりよい授業を行うためのひとつのツールです。「手書きの文字」をよりよく理解して書くことのできる児童を育てるために,ICTが有意義に活用されることを期待しています。おわりに「まなびリンク」は,教科書の QRコードや教育出版のウェブサイトからもアクセスできます。 書写の授業では,かつて個人の活動に終始し,書かれた「成果物としての“清書”(まとめ書き)」のみが目的になったり,教師による評価の対象にされたりしてきたところがありますが,児童のデジタル端末が相互につながれば,教材や児童が書いたものや,先ほどのような個別学習での気づきなどを共有し,課題について活発に話し合うことができるようになります。主体的で対話的な学びがさらに充実していくでしょう。 さらに,児童が実際に書く様子を互いに撮影し,それらを画面で共有し互いに見合うことによって,大切にしたい運筆へ意識を向ける授業の展開もできるのではないかと考えています。協働学習への広がり『力』の運筆動画3デジタル時代の学びのカタチー教科の視点 書写特集
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