―最初に,「デジタル教科書(指導者用)」の利用実態についてお聞きしたいのですが。御校では,社会科の授業の中で,どれぐらい使っていますか? 単元のまとめの時間以外は,ほとんど毎時間使っています。5年の担任は「デジタル教科書がないと,不安になる」とまで言っています。―そこまで浸透しているんですね。どういう使い方が多いのでしょう。 社会科はやはり,写真や図の拡大表示ですね。これまで「教科書の〇ページの右上の写真を見て…」と,一つの資料に注目させるのにも時間がかかったのですが,デジタルで拡大表示すれば一発で視線が集まります。これだけでも,教師としてはだいぶ助かります。 これまでも,大事な資料は教科書を拡大コピーするなどして掲示していましたが,デジタルはそういう準備の手間や費用も省けます。―授業の始めから,デジタルで拡大表示した資料に注目させる,という使い方が多いですか。 そうですね。授業や単元の導入で見せることで,その後の方向付けがしやすくなります。社会科では「今」と「昔」,「暖かい気候」と「寒い気候」など,資料を比べて疑問や関心をもたせることが多いですが,デジタル教科書では複数の資料を「並べて比べる」ことも簡単にできるので,便利です。石井先生石井先生石井先生―疑問や関心をもたせる,という点で,ほかにも効果的なところはありますか? たとえば,5年p.143の「国内で使う原油にしめる輸入の割合」ですが,最初は輸入と国産の割合が表示されていません。 まずはこれを見せて,「どれぐらい輸入していると思う?」と投げかけます。予想させたあと,右下のボタンを押して輸入の割合を表示すると… ほぼ100%が輸入とわかり,自分の予想と違った子どもたちは驚きます。この驚きから,「他にも輸入がほとんどの資源があるのでは?」「貿易がストップしてしまったら,生活はどうなるの?」といった問いが生まれてきます。こういう効果的なグラフの見せ方も,デジタル教科書なら簡単です。 教科書紙面を見たらもちろん答えは書いてあるわけですが,デジタルでは紙面を伏せたまま,資料を順に見せていくコツもあります。授業の前に,重点的に見せたい資料をあらかじめ拡大表示させておく石井先生―学校のICT環境の整備が進んできています。社会科の授業では,デジタル版の教科書・教材,インターネットやデジタル端末をどのように活用しているのか?学校現場の実際の様子をおうかがいしました。社会科の指導に役立つデジタル・ICT~学校現場における活用についてインタビュー~新宿区立四谷小学校校長 石いし井い 正まさ広ひろ 4デジタル時代の学びのカタチー教科の視点 社会特集
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