「小学教科通信」2021年5月号 ウェブ版
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 本単元の授業を進めるに当たって,最大の課題は現地に行くことが出来ないことにあると考えられます。そのため,映像資料とモデル実験を効果的に用いる必要があります。モデル実験では,問題解決のためにモデルと実物間のスケールを行き来する思考が頻繁に繰り返されます。そこで,ICTが大きな力を発揮するものと期待されています。 まず,問題をつくる場面では,グーグルアースで予め設定しておいたモデル河川の上流と下流の様子を各自で観察し,その違いに着目させます(図1)。次に,問題に対する仮説を検証する際は,再度グーグルアースを用いて,他の河川を確認します。グーグルアースでは,川幅の測定も容易で,ストリートビュー機能により川原の様子も観察することができ,仮説で挙がった条件について他の河川にも適用できるのかが調べられます。 グーグルアースでは河川の現在の様子は分かりますが,その成り立ちは調べられません。そこで,河川の成り立ちを再現するためのモデル実験を計画します。山から平野のモデルとしては,1.5m程の高さの築山から起伏を調整してなだらかな平野部をつくります。雨水はホースからの放流水をモデルとし,そこから出来上がる造形の変化の様子により,仮説の検証を行います。山頂部は,V字谷が現れ,平野部に近付くにつれ川幅は広がり蛇行し始め,河口部に近付くと堆積部分が広がり,三角州のようなものもできます。築山への流水は繰り返し行えますが,その過程をタブレット等で撮影することで,その場で再生速度を変えたり,繰り返し確認したりすることができ,事象をより具体的に捉えられます。事象についての対話の中でも,友達の疑問に共感することで,問題意識が生じる可能性もあります。また,撮影した動画と河川の画像を比較することで,モデル実験の有効性を確認できます(図2)。 上記のモデル実験の結果から,「どうやら土地の傾斜と水の量,流れによって河川の形状が決まってくるらしい」と考察できます。そこで,この考えが正しいのか,さらに細かく問題と仮説を設定し,実験計画を立てます。5年「流れる水と土地」におけるICTの活用文京区立本郷小学校教諭 浦うら田た 耕こう平へい図 1 グーグルアースで調べた多摩川の様子はじめにICT活用事例の紹介画像Ⓒ2021Google,画像Ⓒ2021Digital EarthTechnology,Maxar Technologies,Planet com,The Geolnformation Group,地図データⒸ2021図2 モデル実験の結果(左)と実際の河川の様子(右)の比較6デジタル時代の学びのカタチー教科の視点 理科特集

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