昨年6月,新しい生活様式のもと学校生活に大きく不安がのしかかる中,学校が再開しました。学習対象と関わる「体験活動」を大切にしてきた本校の生活科ですが,これまで通りに人と関わる活動は難しいのではないかと模索する日々が始まりました。 本校がある日本橋地域は,江戸時代から続く老舗店や歴史的にも魅力的な場所が多く,多くの観光客が訪れます。飲食店が集まる甘酒横丁,浜町公園や隅田川河川敷,水天宮,明治座,布製品の問屋街など特徴的な地域があります。児童は,地域の店舗での買い物や公園,区立スポーツセンターの利用,地域の祭りへの参加などで地域と関わってきました。地域の人や店舗も大変協力的で,毎年何度も探検に伺いお世話になってきました。 例年,6月〜7月にクラスの全員で「ぶらぶら町探検」を行い,町の素敵を見つけ,秋には,再び町に出かけ,町で働く人と繰り返し関わりながら,見学や手伝いをさせていただく体験活動を通して,「町の人のえがおのひみつ」について学習しています。 しかし,コロナ禍でお店の休業や閉店が相次ぎ,児童の身近な生活圏でも多くの変化が起こりました。学校でも,1学期には,町探検に出られず,単元を入れ替えて,先におもちゃ作りを行いましたが,どうにかして町との関わりを通して学ばせたいという思いがありました。夏休み中に,地域と活動に制限がある中での関わり方を相談しました。ビデオ会議システムを活用したインタビュー活動ができることやストリートビューを使った「デジタル町探検」も視野に入れて計画を立てました。 2学期に入り,地域や町で働く人との関わりを通して学んでほしいという教師の願いのもと,週末に家の人と町の素敵を見つけてこようという宿題を出しました。制限がある中でもこれまで行ったことのある場所やお気に入りの店,新しく発見した場所など,児童が見つけてきたことを共有しました。すると,一人の児童が,「私がずっと好きだったカレー屋さんが,コロナの影響で閉店してしまうから,今までありがとうの気持ちを込めてポスターを作りました。」と教えてくれました。他の児童も,町の素敵をもっと見つけてポスターを作りたい!コロナ禍でがんばっている町の人に感謝の気持ちを届けたい!という願いがつながり,町探検への思いが高まり計画を立てていきました。 少しずつ東京での感染者が減り,学習活動への制限も緩やかになった頃,感染予防に十分留意しながら,町探検に出られることになりました。待ちに待った探検に児童からは「やったー!」の歓声があがりました。学級単位で実際に町を3回歩きました。スポーツセンターからの協力を得て,実際に訪問交流を行い,2回目は1回目の訪問後に出てきた新たな疑問や質問を,ビデオ会議システムを活用して「オンライン交流」を行い,答えていただきました。 そんな中,中央区では11月から各学校3学級に1学級分のタブレットが導入されました。本校では,休校中に「オンライン朝の会」や「オンライン保護者会」を行ってきましたが,児童が使用するタブレットの導入により,一気に学校のICT環境整備が進みました。ICT支援員が毎日配置されることもあり,技術的なことや教材の作り方なども相談し,「デジタル町探検」の可能性が広がりました。 児童は,タブレットPCを使うこと自体に興味をもち,目を輝かせて使用します。しかし,タブレットはあくまでも,情報を集め,記録するためのツールであり,教師は,それを目的化しないことが大切です。情報を得る,その情報を保存(写真・動画・コロナ禍でもできた!タブレットPCを活用した「デジタル町探検」の実践中央区立久松小学校主任教諭 関せき澤ざわ 里さ織おり 子どもの思いから始まった「町探検」「タブレットPC」で学習活動が一変!WITHコロナでの「町探検」はできるの?8デジタル時代の学びのカタチー教科の視点 生活特集
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