小学校生活:キャリア教育の視点から行う生活科授業のリデザイン
相模原市立二本松小学校教諭
〈教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.1 (小学校版) 2021年9月発行より〉
はじめに
学習指導要領においては、「社会に開かれた教育課程」という理念が示されており、キャリア教育の推進が、その理念を具現化するためにも必要であると捉えています。相模原市でも、「さがそうみらいプロジェクト」の名のもと、令和2年度からキャリア教育の推進を行っています。
『さがそうみらいプロジェクトガイド』相模原市教育委員会 令和2年4月
学校では、キャリア教育を行っていくことは、「大変そう」「特別なことをしなければならない」というイメージが大きく、担任一人ひとりの負担ばかりが増えるものと考えていました。
しかしながら、文部科学省「小学校・中学校・高等学校 キャリア教育推進の手引き」を読み解くなかで、小学校低学年のキャリア発達の特徴は、生活科において育成すべき資質・能力と大きく関連することから、生活科の学習でキャリア教育を意図的に行っていくことで、本市のめざす子どもの姿を達成できると感じました。
そこで、子どもたちが普段の授業の中で、「学ぶ意義」を感じることと、「自己有用感」を高めることができるよう、従前の生活科をキャリア教育の視点からリデザインすることにしました。
生活科の授業をリデザインするためのキャリア教育の視点
子どもたちが、「学ぶ意義」を感じ、「自己有用感」を高めていくために、次の「4つのつながり」を意識しながら、単元をリデザインしました。
実践1「あきのおもちゃ作りを通して育む『つながり』」
1年生の2学期に行う「たのしい あき いっぱい」の単元においては、「4つのつながり」の❶❷を意識して、リデザインを行いました。
(1)国語、図工との関連で生まれる
❶「学びのつながり」
本単元を中心として、他教科(国語・図工)を関連づけた学習計画を立てました。
(2)お手本を提示しないことにより生まれる
❷「日常生活とのつながり」
活動を通して、気づきが得られるようなおもちゃを精選し、クラス一斉に同じおもちゃを制作するようにしました。
さらに、導入で提示するのは、おもちゃの名前と、簡単な仕組みのみで、作り方や選ぶ材料なども具体的な提示は行いません。それにより、身近な生活に関わる見方・考え方を生かした、さまざまな発想や気づきが生まれるのではないかと考えたからです。
おもちゃ作りの過程では、「やじろべえは、シーソーの仕組みと同じかもしれない」など、生活のさまざまな場面からヒントを得て、制作に生かし、「自分の考えでおもちゃが進化できた。」と楽しんで学習していました。国語の学習活動では、試行錯誤を通して得た気づきが、伝えたいという意欲を高めていました。このような姿から、「学びのつながり」と「日常生活とのつながり」を意識して単元のリデザインをしたことによって、子どもが「学ぶ意義」を感じたことがわかりました。
実践2「幼稚園・保育園から育む『つながり』」
1年生の3学期に行う、新1年生を小学校に招待する単元においては、「4つのつながり」の❸❹を意識して、リデザインを行いました。
(1)小学校を意識して行う
❸「縦のつながり」
定期的に行う、幼・保・小連携のための地区代表者会の中で、幼・保の先生がたは、小学校入学のためにさまざまな取り組みをしている一方で、小学校について知らないこともあることがわかりました。そこで、3学期の単元を2学期にも分割し、新しい取り組みを盛り込んだ学習計画を立てました。
(2)入学後も続く
❹「人間関係のつながり」
入学後も、生活科1年生、2年生の単元において、作ったおもちゃや昔から伝わる遊びを楽しむための交流を意図的に行いました。
小学校とのつながりを感じられることや、入学してからも交流を継続的に行うことで、「来年、楽しみだな。」「あんな2年生になりたい。」と、1年後の自分と重ね合わせて考える姿がありました。児童自らが、近い将来への見通しをもち、意欲を高めている言葉を発信することが増えたと感じます。そして、上の学年にとっての交流は、「すごいと言われて、うれしい。」「1年生が喜んでくれたから、うれしい。」と、自分が認められる場となっていると感じました。このような姿から、「縦のつながり」と「人間関係のつながり」を意識して単元のリデザインをしたことによって、子どもが「自己有用感」を高めることができたことがわかりました。
おわりに
キャリア教育を行うにあたり、生活科授業をリデザインするという目線で取り組みました。その中で、教師がいかに意図的に、教育活動の場面を線で結び、子どもの将来につなげていく「しかけ」ができるかが重要であることがわかりました。そして、日々の教育活動の中でキャリア教育を行っていくには「今の学びにどんな意味があり、子どもたちにどんな力をつけ、その力が将来にどう生きるのか」を教師が常に自問自答しながら実践していくことが必要なことがわかりました。
|
|