小学校英語:おすすめしたいICTの活用
―より効果的な授業のために―
武庫川女子大学教育学部 准教授
2000年、米国ミシガン州立セントラルミシガン大学大学院英語教授法修士課程修了。2016年、オーストラリア、ビクトリア州立モナシュ大学大学院言語文化文学研究科博士課程修了、応用言語学博士。
〈小学英語通信 「ONE WORLD 小学校英語応援マガジン Smiles」 2020年春号より〉
ICTを活用した外国語教育
文部科学省は小学校英語教育の充実に向けて、ICTの活用を推進しています。最近では、GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想が立案され、児童・生徒1人1台のコンピュータとすべての小・中・高等学校・特別支援学校などに高速大容量の通信ネットワークを完備することが盛り込まれています。
小学校外国語教育におけるICTの活用により、教師の準備や指導の効率化、多様な教材やコンテンツの提供、児童の個人差に対応した教育機会の提供、児童一人一人の主体的な学び、英語学習への興味・関心、意欲の向上が期待できます。
本稿では、小学校外国語教育において、先生方が実践しやすいICTの活用方法について紹介します。
オンラインのウェブサイト教材
主に英語圏のオンライン英語学習サイトには、小学校外国語活動・外国語科の授業に、無料で活用できるものがいくつもあります。はじめに、児童がアルファベットに親しむことのできるサイトをいくつか紹介します。
1) Alphabetical order(アルファベットの順番)
このコンテンツでは、アルファベットの順番をゲーム形式で学習することができます。音声も付いているので、一つ一つのアルファベットの音も確認することができます。
教科書の内容と連携させ、アルファベットのタイピングを、KidzTypeを使って行うことで、児童が楽しみながら文字学習を行うことが可能になります。
キーボード入力を念頭においた教科書紙面
(ONE WORLD Smiles 5, p.19)
他には、さまざまな英語学習に使える動画を観ることができるYouTubeを活用することも考えられます。例えば、「English songs for kids, colors」というキーワードで検索すると、色を題材としたたくさんの子ども向けの英語の歌を見つけることができます。また、検索キーワードの最後の言葉を別のトピック(例:numbers,animals,fruits)に変えることで、そのトピックに関する多くの歌が表示されます。
YouTubeでは、検索キーワードがはっきりわかれば、小学校英語に関連する多種多様なコンテンツを見つけることができ、授業に活用できます。
ICTを活用した自作教材
ICTを活用した自作教材は、教材準備や使用の効率化につながるとともに、先生方が担当する児童の実態に応じた指導にも活かすことができます。
ICTを活用した教材作成では、PowerPointなどのプレゼンテーション用ソフトの活用が挙げられます。例えば、PowerPointに絵や写真を貼り付けるだけで簡単に絵カードを作成することができます。さらには、アニメーション機能を使うことで、絵や写真を説明する文字を、時間差で提示することも容易にできます。
パワーポイントでの文字提示
また、Windowsのペイントでも簡単に行うことができますが、「GIMP」などの画像加工のフリーソフトを使うことによって、写真や絵を加工することができます。この機能を使うことによって、例えば、物の絵や写真をモザイク化し、What's this?クイズを作成することが簡単にできます。
画像加工ソフトを活用したWhat's this?クイズ例(パン)
児童によるICT教材作成
教師がICTを活用して英語教材を作成することを、授業中の児童の活動に応用できます。児童が画像加工ソフトを使って、グループ毎にWhat's this?クイズを作成し、クラスで発表させることによって、児童が英語を発話する機会につながります。
また、行きたい国の旅行案内をPowerPointで作成し、プレゼンテーションを行う活動なども考えられます。PowerPointを活用したプレゼンテーションでは、資料作成、発表、友達の発表を聞くという一連の活動のなかで、4技能を扱うことが可能となります。
教育用ソーシャルネットワーク(SNS)の活用
Google ClassroomやEdmodo(エドモド)などの教育用SNSを活用した活動は、文字を使ったコミュニケーション活動を可能にします。教育用SNSは、教師から配付されたグループコードによって登録した学習者のみがオンライン上で活動するので、セキュリティーの面で安全です。教育用SNSでは、グループの掲示板に文字を書き込むことができるだけでなく、写真や動画を掲載することもできます。また、グループコードを共有することによって、他のクラスや学校の児童と教室の壁を越えたオンライン学習コミュニティを形成し、児童どうしが簡単に交流できるようになります。
例えば、海外の小学校のクラスと教育用SNS上でつながり、習った英語を使って好きなものを紹介し合ったり、相手に日本文化を紹介したりする活動などが考えられます。このように、実在する相手に対して英語を使う必然性のあるコミュニケーション活動は、児童の英語学習への関心・意欲を高めるよい機会となるでしょう。
おわりに
ICTを活用した外国語教育は、教育の効率化だけでなく、グローバル化がますます進む次世代を生き、そして活躍する児童一人一人の能力と可能性を最大限に引き出すものとなります。
次世代の人材育成として、ICTを活用した小学校英語教育に取り組んでみてはいかがでしょうか。