「つながる」がキーワード 未来社会の創り手を育むかわさきGIGAスクール構想
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川崎市総合教育センター情報・視聴覚センター |
〈Educo No.55 2021年5月発行より〉
ポイント
①教育委員会事務局の各部署が「つながる」ことで共通理解しながら「かわさきGIGAスクール構想」を推進。 ②民間企業と「つながる」ことで教職員に対する研修が充実。 ③今後の課題は各学校が「つながり」ながら「かわさきGIGAスクール構想」を推進していくこと。 |
教育委員会事務局が「つながる」
川崎市では、総合教育センター情報・視聴覚センターが中心となって「GIGAスクール構想」を推進している。令和2年度中に11万7千台の端末の整備完了ということだけでも大きな事業であるが、さらに整備のその先には子どもたちの学びの充実が待っている。しかし、「川崎市としてGIGAスクール構想でどのような教育を展開するのか」、この課題は単に一部署が奮起してできることではない。それは教育全体に大きな変革をもたらすからである。
- 教職員向けハンドブック
令和2年7月、教育委員会事務局の各部署の代表者が集まり、教職員向けに川崎市のGIGAスクール構想のリーフレットを作成することになった。そこで議論され、決まったことが「かわさきGIGAスクール構想」の核心となった。育てたい子どもの姿を「未来社会の創り手」とし、「つながる」をキーワードに「かわさき教育プラン」の実現に向け、段階的に取り組みを進めていく。さらに10月には教職員向けのハンドブックを作成することになり、各部署がそれぞれの立場でページを分担することとなった。幾度となくもった編集会議では、目指す方向性や必要な運用ルール等が共有され、「かわさきGIGAスクール構想」のソフト面が構築されていった。こうして、教育委員会事務局のさまざまな部署が「つながる」ことでできあがった教職員向けハンドブックは、「川崎市としてGIGAスクール構想でどのような教育を展開するのか」という課題に向けた、各部署の主体性が詰まったものとなった。令和3年3月上旬に川崎市のすべての教職員の手元に届いている。
本誌でも、「つながる」をキーワードに、川崎市のGIGAスクール構想構築に向けた取り組みを述べることとする。
民間企業と「つながる」
川崎市では、小中学校にはChromebook、特別支援学校にはiPadを採用した。特にChromebookは教職員も、教育委員会事務局の職員も、触ったことのない人がほとんどで、新しいスタートとなる。どのように研修をしていくかが課題となった。
まだ整備が完了していない中、Google合同会社のご協力のもと、機器貸出をしていただいたうえで実現したKickstart programは大変好評で、約1千人の教職員や事務局職員が受講することができた。「まず触ってみる」ことで「どのような学びをつくっていくか」というイメージがもてたことは大きかった。また、小中学校へは「ミライシード」を導入しているが、製作元の(株)ベネッセコーポレーションのご協力によって、市内数校の教育情報化推進モデル校等への研修、また各学校のGIGAスクール構想推進教師(GSL)への研修等が実現した。ハンドブックの作成にもご協力いただいた。さらに、令和3年度は、(株)JMCによる各学校への巡回研修を予定している。また、Google合同会社のご協力のもと、川崎市のGIGAスクール構想のプロモーション動画を制作していただいた。これは広く市民にも公開される。市のホームページとしても「かわさきGIGAスクール構想」のページを作成し、そこでも情報配信しているが、保護者や市民への理解をいただくことは大変重要である。
民間企業と「つながる」ことで、市のマンパワーでは成し得なかったことが実現している。感謝するとともに、今後の教育にとって、こうした企業連携は欠かせないものであると実感している。今回も教育出版株式会社よりこのように取り組みを発信する場をいただけたことに大変感謝している。
各学校が「つながる」
各学校の校内組織として、これまで同様に機器管理等も行う情報教育担当のほかに、「かわさきGIGAスクール構想」を推進するリーダーとしての「GIGAスクール構想推進教師(GSL)」を新たに1〜2名設けるようにした。このリーダーがいかに校内で孤立せずに、やりがいをもって取り組めるかが、重要な鍵であると認識している。推進するうえで困ったことを共有したり、取り組みを共有したりできるような気軽な場が必要である。そこで、令和3年2月からGIGAスクール構想推進教師を中心とした「Google Classroom」を作った。現在、毎日のように、その中で情報交換がなされているところである。また、教育長からメッセージを送ったり、教育委員会から質問へ回答したりというような、委員会と先生とのフラットな場となっている。このような場を作ることが、教職員の主体性やマインドセットを促すきっかけになると考えている。
令和3年度は、さらにその横のつながりをもっていただきたいと、地区ごとに「かわさきGIGAスクール構想推進協力校」という拠点校を設けた。また、前述の市全体のクラスルームはそのまま持ち続けるとして、新たに地区ごとに「Googleチャット」のグループを作成する予定である。これにより、さらに気軽に悩みや取り組みを共有できるようにしていく。そして、よい事例や資料を共有するサイトも構築する。さまざまな立場での考えが融け合う場を設けることで、川崎市としての取り組みがより一層同じベクトルとして推進できるものと考えている。
段階的に推進する「かわさきGIGAスクール構想」
令和3年度は「まず使ってみる」を合い言葉に、ステップ1として、インターネットに「つながる」ことで、いつでも、どの教科でも使えることを実感する段階としている。令和4年度はステップ2として、1人1台端末によって既習や他者と「つながる」ことで、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善ができ、資質・能力をより確実に育成する段階としている。令和5年度はステップ3として、各教科等の学びが、他教科等や生活に「つながる」ことで、社会にあるさまざまな課題の解決や一人一人の夢の実現に活かす段階としている。かわさき教育プランの基本目標である「自主・自立」、「共生・協働」の推進に向け、段階的に、そして着実に、推進を図っていきたい。