コロナ禍でも「そんなの関係ねぇ!」教育動画で笑いと学びを届けたい
タレント
〈Educo No.56 2021年9月発行より〉
YouTubeの教育動画が子どもたちに大人気
去年からYouTubeで「小島よしおのおっぱっぴー小学校」というチャンネルを開設し、子どもが授業で疑問を抱きがちな点をわかりやすく解説する、教育動画を配信しています。
動画ではおぼえうたを歌ったり踊ったり、ウナギの生態に迫ったり、田んぼで生き物調査をしたりと、僕が体を張って、さまざまな挑戦をしています。
収録するときは僕ひとりでも、画面の向こうにいるたくさんの子どもたちの顔を思い浮かべて、問いかけや語りかけをしながら進めるようにしています。
休校期間中の学びを動画でサポート
動画を作り始めたのは去年の3月、緊急事態宣言で全国の学校が休校になったのがきっかけでした。
子どもたちのために何かできないかと思っていたときに、知り合いの放送作家さんからお話をいただいて。作家さんにはお子さんがいて、日本の子どもの学力がコロナ禍で低下してしまうのを心配されていました。なんでも、「小学校5年生の壁」というものがあり、多くの子どもがここで勉強につまずいてしまうのだと。
僕が早稲田大学の教育学部出身で、子ども向けのライブを長年続けていることをご存じだったので、「授業の動画をやってみない?」とお声がけくださったのです。それなら子どもたちのために一肌脱ごうと決心しました。(脱ぐのは得意なので)
「おっぱっぴー小学校」を始めるとすぐに評判が広まり、チャンネル登録者数は今や11万人を超えました。
子どもたちからは「時計を読めるようになりました」とか、「勉強嫌いだったけど、この動画は観ています」など、たくさんのコメントが寄せられています。
親御さんや先生方からの反応は今までにないくらいよいですね。「そんなの関係ねぇ!」でブレイクしていた頃は、「子どもが言うことをきかなくなるからやめてくれ」と言われていたので。それを考えると、今は180度違う評価をいただいています。学校の先生からも「おもしろかったよ」との感想をいただけて、本当にうれしいですし、次の動画を作るモチベーションになっています。
教えることの難しさと楽しさ
動画を作るときは僕と放送作家さんとディレクター、監修の方でチームを作り、アイデアを出し合って構成や表現を考えています。
自分でやってみて、授業を作るって本当に大変だなと実感しました。「÷3」はひっくり返して「×1/3」であると僕は機械的に覚えてしまいましたが、これを教えるとなったとき、どう説明すればいいのか。時計の読み方にしても、時計は12進法と60進法が一緒に使われているので、説明にはたと迷ったり。こちらが当然と思っていることが、子どもにはわからないかもしれない。彼らの目線に立って、物事の本質的な部分から説明しなければならないことに、難しさとやりがいを感じます。学校で実際に教えている先生方は本当に尊敬しますし、頭が下がります。
動画を作る際、僕はなるべく自分が楽しんで、子どもたちに「楽しいことをやっているんだよ」というメッセージを送るようにしています。先生方も、まずはご自身が楽しんでほしいですね。
動画で学んで広がる世界
授業のヒントを得るため、日々の読書は欠かせません。子どもの頃から本はよく読んでいて、近年興味があるのは論語、五輪書、菜根譚です。今後は英語や社会、プログラミングなどの授業動画も作っていきたいですが、将来的には論語を下敷きにした道徳の授業などもできないか、思案中です。
僕が子どもの頃は、学校の先生や友達、家族が世界のすべてでした。でも今の子たちは動画で学ぶことによって、学校や家庭とは全く異なる、いろいろな世界や価値観があると知ることができるので、素晴らしいなと思います。
一つの教えに凝り固まらず、世界にはいろんな人がいて、自分が生きている限られた社会とは全く違う文化や価値観、多様性にふれられるのは、人としての幅や選択肢を広げてくれます。それは自らの可能性を広げてくれますし、今後生きていくうえで大きな助けとなるのではないでしょうか。
【YouTubeチャンネル】
小島よしお(こじまよしお)
1980年沖縄県生まれ、千葉県育ち。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。自身の父が校長を務める専門語学学校、欧米・アジア語学センター副校長。大学在学中から芸人として活動を始め、「そんなの関係ねぇ!」が2007年『ユーキャン新語・流行語大賞』にトップ10入りするなど大ブレイク。著書に『小島よしおのとけいドリル』(ワニブックス)、『キッズのココロわしづかみ術』(主婦と生活社)他。