学びを止めない遠隔・オンライン教育の力
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栃木県壬生町立 |
〈Educo No.57 2022年1月発行より〉
「いつもと変わらない」オンライン学習
「オンライン学習はどう?」と児童に聞くと、「いつもの授業とあまり変わらないです。」と返ってきた。新型コロナウイルス感染症による臨時休校で、家庭にいる児童と教師をつなぐオンライン学習を行っている時のことである。
文部科学省は、疫病や地震等の災害が発生した際登校できない場合も学びを止めないために、遠隔・オンライン教育を取り入れた家庭学習(以下、オンライン学習)が有効であるとしている。自宅にいながらも、普段の授業に近いいつも通りの学びができることは、児童生徒や保護者、教師にとって、大きな安心につながるだろう。
いつもと変わらないオンライン学習を支えたものは、クラウドを活用した学びだった。まず、Web会議システム(Zoom等)を使い児童と教師がつながる。これは教室に集まる感覚に近い。そして、各教科等の学習はGoogle Workspace for Educationのツールを「文房具」的に使った。オンライン学習で考えや成果物をノートに書くと、教師は各自が書いたものをリアルタイムで見ることができない。しかし、Googleスライドなどクラウド型ツールに書けば、教師はもとより児童同士も、誰がどんな学習をしているのかがわかる。教師は共有されたスライドをもとに学習状況を把握し、必要に応じてWeb会議システム上で、あるいはコメント機能などを用いてアドバイスする。児童は悩んだらテキストで相談したり、友達の作品を参考にしたりする(写真1)。いずれもクラウドによって可能なことであり、児童はまるで教室にいるかのように、教師や友達と協働しながら学習を進めることができた。だから、「いつもの授業とあまり変わらない」のだろう。
写真1:クラウドを活用して、教室にいるかのように学ぶ様子
「普段づかい」がつながる
こうした学習が「いつもと変わらない」ということは、教室での普段の授業でもクラウドが基盤となっている。臨時休校になってから、あるいはなることがわかってから、急いで端末を使い始めて行ったわけではない。普段の授業で文房具として端末を使う。クラウドでどんなことができるかを、教師も児童も体験的に理解する。そうした段階が必要である。さらに、休み時間や家庭など、授業以外の場でも端末に触れることで、操作に慣れたり使い方を覚えたりすることも大切である(写真2)。教師が指示したときにだけ使うようだと、いつも使う「文房具」にはならない。ノートや鉛筆、辞書などを休み時間や自主学習で使っていいように、端末もまた、児童が文房具として普段づかいすることが大切である。そうした経験が、いざというときも学びを止めずに協働的に学び合える児童を育てることにつながる。
写真2:休み時間に友達と端末を使う様子