小学校理科:学習用端末の機能に応じた効果的な活用
北海道旭川市立朝日小学校教諭
〈教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.4 2023年4月号より〉
はじめに
GIGAスクール構想により、1人1台の学習用端末(以下、端末)の活用が始まっています。端末は特別な道具ではなく、日常的に活用する「文房具」の1つとして教育現場での浸透が進んでいます。
理科は、児童自身が自然の事物・現象に働きかけていく教科であることから、端末の活用方法は、問題解決の過程と関連づけて考えていくのがよいでしょう。寺本(2022)によると、理科における授業の目的について問題解決の過程から4つの目的に整理し、6つの機能をあてはめています(表1)。
表1 理科の授業の4つの目的と6つの活用機能[1]
これらの活用方法は、問題解決の過程と密接に関わっています(表2)。例えば、検索機能は「自然事象に対する気づき」「検証計画の立案」「観察・実験の実施」の場面での活用が多いことがわかります。
表2 問題解決の過程と活用機能の関係[1]
そこで、端末の活用について、学習内容をふまえながら考えていきたいと思います。ここでは、問題解決の過程のあとで定着を図る習得機能を除く5つの活用について、実践をもとに紹介します。
検索機能
インターネット上にある多くの情報について児童自身が検索します。
第5学年「天気の変化」の学習では、映像などの気象情報を用いて天気の変化について予想します。気象庁の雲画像や天気図、雨雲レーダーなど複数の情報を集めながら、天気の変化の規則性を調べていきます。
気象庁のサイト以外にも、NHK for Schoolや各地方のライブカメラなど、さまざまな情報を組み合わせながら調べ、自分なりの根拠を確かなものにしながら、数日後の天気について根拠のある予想を立てられるようになります。
なお、オンラインを活用して遠隔地をつなぎ、天気の情報を交流することも効果的です。
1時間先までの予報(出展:気象庁ウェブサイト)
蓄積機能
ホウセンカやヘチマなど、植物の成長記録は、カメラ機能を活用し、それぞれの成長過程ごとに撮影し、蓄積しておきます。
第3学年「花をさかせたあと」の単元の最後には、これまで蓄積してきた画像を活用してまとめることができます。これまでの画像から必要な情報を選択し、1枚のシートにまとめ、植物の発芽や成長過程について振り返ります。植物の観察は、季節をまたぐ長期間の学習となることから、過去の成長の過程を思い出すことが難しい場合もありますが、画像として記録し、メモを残しておくことで思い出しやすくなるでしょう。なお、植物の観察にも有効ですが、メダカの成長記録や季節ごとの昆虫の画像を蓄積することも有効です。
蓄積しておいた画像を1枚にまとめています。(オクリンクを使用)
確認機能
変化がわかりにくいものや繰り返し実験することが難しい内容も、何度でも確認することができます。
第4学年「もののあたたまり方」の学習では、水はどこから温まるのかを確認する際に示温インクをよく活用します。示温インクの色の変化は、つい見逃してしまうことがあります。その際、端末で撮影した実験の様子を確認することで、何度も見返すことができます。確認できることで、「きっとこうだったと思うんだけど」から「このように変わりました」と確信をもって結果を捉えることができ、そのあとの考察が確かなものになります。
また、撮影した動画をスローモーションで再生したり、長い時間をかけて動画撮影したものを早送り機能で再生したりするなど、内容によってさまざまな確認の仕方があります。
確認したことをもとにノートに記録します。(オクリンクを使用)
整理機能
実験結果をわかりやすく視覚化することで、児童自身の思考の整理につなげることができます。第3学年「電気の通り道」の学習で、電気を通すものと通さないものを調べる場面では、事前に電気を通すものと通さないものを予想しますが、そのときにあらかじめ通すものと通さないものに分けておきます。そして、実験後に電気を通したものは背景を黄色に、通さなかったものは背景を青色にすることで、自分の予想との比較や電気を通したものと通さなかったものがすぐに見分けられます。
このように、集めた情報を整理することによって、共通性に気づくことにつながります。
通すものと通さないものに分けています。(オクリンクを使用)
共有機能
学級全体で考えを共有することによって、新しい視点に気づき、考えを深めることができます。
第6学年「植物の体」の学習では、水の通り道に着目するために、しおれているホウセンカと元気なホウセンカの写真を提示します。2枚の写真を見て気づいたことや疑問を出し合います。その後、しおれたホウセンカに水を与え、茎が立ち上がっていく様子を早送り機能を活用して動画で視聴することで、水が関係しているのではないかということに気づき、根から取り入れられた水は植物の体をどのように通って全体に運ばれていくのだろうかという問題を見いだします。
気づいたことをGoogle Jamboardに記録します。
終わりに
これらの機能を把握しながら学習を進めることで理科の学習がより一層充実します。学習のねらいや学年の発達段階を加味しながら、効果的な端末活用を進めていただけたらと思います。
【引用文献】
・[1]寺本貴啓:『これからはじめる"GIGA"全学年・全単元×1人1台端末×活用事例 小学校理科 3・4年』日本標準(2022 p.22〜23)