中学校書写:ICTの活用により、自分で気づき、共有して高め合う書写の授業デザイン
横浜市立深谷中学校教諭
〈教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.2 (中学校版) 2022年4月発行より〉
はじめに
【校内のICT環境】
GIGAスクール構想により一人一台のタブレット端末(Google Chromebook)が貸与され、本校では各教科でICTを活用した授業が展開されるようになりました。生徒はドキュメントによるレポート作成や、スライドによるプレゼンテーション、Jamboardによる意見交換など、全ての授業で自身のタブレットを使用する機会があります。また、昨年度からのコロナ禍で全市一斉休校や分散登校を経験し、オンラインでの課題のやりとりの機会が増え、Google Classroom(以下Classroom)で課題提出を行うなど、タブレット端末での学習が日常化した状態になりました。
そこで、今回は書写学習のなかで、タブレット端末を活用しながら課題解決型学習を行うという、授業デザインを提案いたします。
授業計画
今回提案する活動は、現在の指導要領の第二学年「書写」に関する指導事項(ア)「漢字の行書とそれに調和した仮名の書き方を理解して、読みやすく速く書くこと。」をねらいとしています。
授業展開
タブレット端末を活用することで感じた利点
(1)基準を書き込んだ教材文字をカメラ機能で撮影してデータ化しておき、生徒自身が書いたものも同様にデータ化しておくと、半紙数枚と見比べる時よりも机周辺がすっきりとした状態になるため、生徒は落ち着いた環境の中で自己批正したり、自身の書字の変化を見たりすることができました。
(2)ドキュメントに、半紙の一枚めに試書したものと、いちばん課題解決できたものとを貼ることで、自身の書字の変化を具体的な言葉で表すことができました。また、それをPDF化してロイロノート・スクールに提出すると、クラス内で書字したものを共有することができます。個人が意識した運筆の流れを互いに見合うことで、行書の運筆に不安がある生徒が、クラスの仲間が何を意識して書いているのかといったことや、どうしたら速く読みやすい文字が書けるかということを理解しやすくなりました。その結果、日常生活のなかで、ワークシートにメモ書きするような機会に、行書を使ってみようという生徒が増えたように感じます。
(3)Classroomに書字したものを写真データで提出することで、当日授業を欠席した生徒が後から提出した時に、提出物のやり取りがしやすくなりました。また、今年度のように一斉休校措置や分散登校を行った際にも、課題をやり取りしやすいと感じました。
(4)Classroom上で評価を行い、コメントを書くことで、生徒は自分が書字したものを見ながら課題解決できたことや、次にどのようなことを意識したらいいのかといったことを明確に知ることができました。そして、今回の教材だけでなく、過去の評価を並べて見ることができるので、ポートフォリオのような活用も行えました。
ワークシート
タブレットで生徒自身が書いたものの変化を見ながら批正
Classroomへの提出の様子
おわりに
タブレット端末が配布されて、効果的な使い方とは何だろうと日々模索していました。私自身、手書きである書写とICTは真逆であると思っていました。
しかし、今回実践したような場面で使うことで、生徒が自らの変化に気づいたり、共有してお互いを高め合ったりし、主体的に学習に取り組む機会になったと思います。これからも生徒に身につけたい力を第一に考えた授業デザインをめざして、効果的なICT活用に挑戦していきたいと思います。