小学校社会:子どもが主役の歴史(文化)学習を求めて
~個別最適・協働的な学びとICT活用を中心として~
徳島県徳島市立千松小学校教諭
〈教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.4 2023年4月号より〉
はじめに
これからの未来の創り手である子どもたち自身が、まさに授業の主役(主体的存在者)となる必要があると考えます。その際、主役の子どもたちが獲得した知識・技能をもとにして、思考・判断・表現を繰り返しながら、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善が求められています。そして、それを実現するキーとなるものが、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」と捉えています。今回は、「個別最適・協働的な学び」と「ICT活用」を中心にした授業実践をご紹介します。
歴史学習における文化学習
6年生の歴史学習は、「人物学習」を基軸とし、その人物の多くが為政者といえます。文化は為政者の統治によって生み出されるものばかりではなく、人々の生活や地域の風習などからも生み出され、現代に続いているものです。また、文化は子どもたちにとっても生活に根づく身近なものでもあります。そんな文化から歴史を見ることで子どもたちが主体的に学び、より多角的に社会的事象を見つめることができるでしょう。そこで、今回は「人物学習」を基軸としつつ、「帯」学習として文化を位置づけ、授業を行いました。
授業実践事例『室町文化と力をつける人々』
今回は、教科書単元『室町文化と力をつける人々』の実践をご紹介します。単元の流れは次のとおりです。
(1)個別最適・協働的な学び
個別最適な学びの充実にあたって、教師が指導の個別化を保障していくこと、そして、個々の子どもたちの学習も個性化を保障していくことが重要です。今回は、子どもたちがそれぞれに興味・関心のある文化を選択し、調べ学習を行う時間を設定しました。その際には、一人で調べて追究するのか、同じ文化について調べている友達と一緒に追究するのかを選択できるようにしました。また、情報収集についても教科書や資料集、インターネットなど自分に合った方法で調べていくことで、自らの学習を調整しながら粘り強く、主体的に学んでいく子どもたちの姿が見られました。
教師は、電子黒板などで共通資料の提示や他の子どもの様子が分かるようにするとともに、個々の子どもたちを見取りながら、個性的な学びへの支援をするように努めました。
自分に合った学び方で調べた後は、同じ文化について調べた友達と情報を共有します。その他の文化については、ポスターセッションを行い、それぞれの文化の共通点や相違点などについて考えていきます。
さらに、自分たちのそれぞれの学びを学級全体で共有しました。異なる考え方が組み合わさることで、室町文化への理解が深まりました。
自らの学習を調整しながら、個人で学習を深めたことをもとに友達と協働的に考えていくことで、よりよい学びを生み出します。「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実していくことが大切です。
(2)ICT活用~「My文化帳」~
ICT活用をすることにより、子どもの個性や適性に応じた学習環境を保障することができます。また、自分が学びたいことについて情報を収集したり、それらを友達と共有して考えを深めたりする際にも、ICT活用は効果的だと考えます。さらに、文化を「帯」で学習するにあたっても、ICT活用が有効であると考えています。学んだことをICT活用により記録していくことで、どのような学びを行い、どんな成果を得たのかをデータとして蓄積することができるので、子どもにとって次の学習へと結びつける手がかりとなるだけでなく、教師もより正確な評価や的確な支援を実現することができるでしょう。そこで、今回は授業支援アプリ「MetaMoJi ClassRoom」を活用し、「My文化帳」を作成していくこととしました。この「My文化帳」は、授業内容や文化について調べたことを記録していくものです。「My文化帳」では、子どもの学びがデジタル化することで、紙媒体よりも自由度が増し、子どもの表現の幅が広がりました。また、協働思考の際にもグループ編集ページを活用し、分かったことを共有できるようにもしました。
単元の終末には、学習してきたことをもとにして、室町文化がどのような文化であるかを示すタイトルやリード文を考え、「My文化帳」の表紙を作成しました。ここでも、これまで学習してきたことを「My文化帳」を見返しながら考える姿が見られ、学習履歴の蓄積ができるというICT活用の利点が生かされました。
このようにICT活用は、主体的な学びを促し、子どもの表現力の高まりにもつながります。また、教師が子どもの学びについて把握する点においても、デジタルでまとめることは効果的だったと捉えています。
おわりに
本単元では、(1)個別最適・協働的な学び(2)ICT活用について、それぞれ記述しましたが、2つは決して別々に実践したものではありません。互いに関わり合いながら、時には同時に展開していきました。要は、この2つの視点からの方法で、より授業そのものが子どもたち主役となり、一人一人の資質・能力の育成につなげていくための授業実践に結びつく第一歩となったのではないかと考えています。
◆この授業実践をまとめた学習指導案は こちら