中学校社会:現在・将来の考察、構想につながる歴史学習の実践
~デジタル教科書を活用して~
東京都中野区立中野東中学校教諭
〈教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.3 2022年9月号より〉
はじめに
教育出版の歴史的分野教科書の「現代」の単元における、デジタル教科書を活用した授業実践例を紹介します。第7章・「1節:日本の民主化と冷戦」では、国際連合の発足や米ソ両陣営の対立、アジア諸国の独立や朝鮮戦争、その後の平和共存の動きなどを、日本の動きと関連させながら扱うことをねらいとしています。その中でも「③冷たい戦争の始まり」では、北大西洋条約機構、安全保障理事会等、生徒がニュースで耳にする事象も取り上げられています。そこで今回は、その位置的な広がりや歴史的な経緯について、デジタル教科書を有効に活用しつつ、現在とのつながりという観点からとらえさせることを目ざしました。
歴史的分野も大詰めにさしかかる本単元では、ここまで学んできたことと自分たちとのつながりや、現在と未来の日本と世界の在り方について、課題意識をもって考察、構想することが求められています。国際連合の役割が大きな話題となっている昨今の状況の中で、その仕組みと課題について、歴史的な側面のみならず、現在の国際情勢と関連づけて考察することは、歴史的分野の学習を通して現代社会について考えるために非常に重要ではないでしょうか。本時の学習が、現在、そして将来の世界の姿の構想に繋がるためのステップになればと思います。
デジタル教科書活用のねらい
授業の序盤では、p.260資料1を拡大して提示します。
デジタル教科書p.260 資料1 東西陣営の対立(1955年)
東西両陣営の軍事同盟やその他の勢力について、凡例ごとに表示することが可能なので、それぞれの位置的な広がりについて、具体的にイメージをもたせることができると考えられます。
東西ドイツの分裂の様子やベトナム戦争の展開については、デジタル教科書の動画コンテンツ(p.260、264の動画リンク)を活用します。生徒の視覚的な理解を助けるとともに、必要な情報が短時間でまとめられているため、授業後半の考察に充てる時間を確保するためにも有効です。
デジタル教科書p.264の動画リンク
授業の改善案・さらに活用へ
国際連合発足後に起こった出来事について、教科書p.286の年表資料をもとに生徒自身にまとめさせることも考えられます。
デジタル教科書p.286の年表資料
漠然と平和なイメージでとらえがちな第二次世界大戦終結以後も、さまざまな戦争、対立が存在することを視覚的に実感できるのではないでしょうか。
本時の授業で考察した内容をもとに、歴史的分野の学習のまとめとして、現在と未来の日本や世界の在り方について考察・構想を行うこともできます。その際、国連などの国際機関、日本政府、そして我々一人一人という多角的な視点から考えていくことが大切です。こうした実践を通して、平和で民主的な社会形成についての考察がさらに深められればと思います。
学習指導案(例)
◆単元名:第7章 現代の日本と世界 1節 日本の民主化と冷戦 「③冷たい戦争の始まり」(教育出版歴史的分野教科書pp.260-261) ◆本時の目標: ・第二次世界大戦の反省から新たに国際連合が発足した一方で、米ソの対立から東西陣営の冷戦が生じたことや、朝鮮戦争、中華人民共和国の成立などの世界の動きを理解する。 ・国際連合の役割、東西陣営の対立と代理戦争等の事象について、現代の国際情勢との関わりという視点から考察する。 |
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《本時の展開例》