中学校社会:私たちの選択が未来を変える
~エシカル消費で
一般社団法人エシカル協会代表理事
〈中学社会通信 「Socio express」 2019年秋号より〉
1.はじめに
「エシカル」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。「エシカル」とは、直訳すると「倫理的な」という意味で、法律の縛りはないけれども多くの人が正しいと思うこと、または社会的規範を意味します。最近、日本でも「エシカル消費」が注目され始めていますが、ここで言う「エシカル」とは、人や社会、地球環境、地域に配慮した考え方や行動のことを指します。実はエシカル消費を実践することで、持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる17個の目標のうち、12番めの「つくる責任 つかう責任」の達成に寄与できます。それだけでなく、13番めの「気候変動に具体的な対策を」をはじめとする、いくつかのゴールの達成にも有効です。学習指導要領で『ESDの視点(SDGs)』が強調されたこともあり、「子どもたちにどのような学びを通してエシカル消費へ興味をもたせ、実践に取り入れられるのか、その方法が知りたい」という中学校の先生方も増えてきました。そこで、ここではエシカル消費の基礎的な知識と、実際にどのような学びがあるのかをご紹介します。
2.身近なものから想像を
いま私たちが着ている洋服は、どこで、誰によって、どのように作られたのでしょうか。今朝飲んだコーヒーはどうでしょう。その生産工程について、製品を手にしながら想像してみても、その裏側にある背景まで知ることは難しいのではないかと思います。買い手である私たちと、製品が作られる背景の間には大きな壁が立ちはだかり、この壁を乗り越えて生産工程を知ろうとすることは容易ではありません。では、もしも壁の向こう側で、人や地球環境を犠牲にするような問題が起きているとしたら、どう思われるでしょうか。身近なものを通じて、子どもたちが製品の背景を想像することは、さまざまな問題を自分ごととして考えるきっかけになります。「エシカル」な消費とは、人や環境などに関する問題を引き起こしていないような製品を購入することであって、いわば「顔の見える消費」とも言えます。
日本では、消費者庁が2015年5月から2年をかけて「『倫理的消費』調査研究会」を開催し、エシカル消費の枠組みづくりが行われました。エシカル消費は間口が広く、「エシカル」という大きな傘の下に「フェアトレード」を筆頭として「オーガニック」や「地産地消」「障がい者支援につながる商品」「応援消費」「伝統工芸」「寄付付き商品」など、幅広い消費の形があります。
3. 途上国の生産現場の現状
そもそも、なぜエシカル消費が必要なのでしょうか。それはエシカル消費を推進していかざるを得ない、不公正な世界の現状があるからです。私たちは日々なんらかの消費をして生活をしていますが、毎日着る洋服の原料となるコットンや、コーヒー、紅茶、チョコレートの原料となるカカオなど、多くのものは途上国で作られています。その生産背景には、労働搾取や児童労働、環境破壊といった深刻な問題が潜んでいます。2013年4月に起きたバングラデシュの縫製工場「ラナ・プラザ」の崩壊事故では、1100人以上の生産者が犠牲になりました。ここでは主に、私たち先進国の消費者が安いといって好んで購入する、ファストファッションのブランドの商品が作られていたのです。私たちが求める安い商品のかげで、途上国の弱い立場にある生産者が犠牲になることもあるのです。
4. 私たちにできること
一方、先進国に住む私たちができることはなんでしょうか。私たち全員に共通することは、消費者であるということで、毎日なんらかの消費のためにお金を使っています。企業にとって消費者の存在は無視できず、私たち消費者が何を求めるかによって、企業の生産のあり方も違ってきます。買い物には、投票と同じような役割もあるのです。そう考えたとき、私たち消費者が持つ力は絶大であり、同時に責任もあります。「誰が、どこで、どうやって、どのように作った製品か」を意識しながら、買い物をすることが重要です。フェアトレードやオーガニックコットン、適切に管理された森林や環境に配慮した漁業の認証など、ラベル付きの製品は参考になるでしょう。
現在、消費者庁と共同で、「日々の暮らしが、世界の未来を良くすることにつながることを発見するワークショップ」のプログラムを開発中で、すでに小中学生を対象に実践が始まっています。このワークショップは、エシカル消費の基礎的な知識や世界で起きている問題を知ってもらうレクチャーと、実際に店頭で入手できる認証ラベルがついた製品を探す、というゲームが組み合わさったものです。後半のゲームでは、教室をスーパーに見立てて、子どもたちが自由に製品を手に取りながら認証ラベルを探し、そのラベルがどのような課題の解決のためにあるのかを関連づけて、チャレンジマップに記入していきます。子どもたちからは、「これからはスーパーでラベルを探す」「友達に伝えたい」「お母さんとお父さんにも教えてあげたい」など、嬉しい感想をもらいました。このワークショップが、認証ラベルの製品を購入するだけでなく、それぞれの消費のあり方を見つめ直すことにも繋がればよいと考えています。


5. まとめ
「エシカル」という考え方は、自然と人と生き物たちが、いいあんばいで共存できる世界を目指しています。昔から日本人が大切にしてきた「おもいやり」や「おたがいさま」「足るを知る」といった精神は「エシカル」の理念に通底し、 高い親和性があります。「エシカル」とは、「
Be the change !