ホーム > 特集 > 中学校道徳 > 実施にあたって > 変わる道徳教育 > 1 「特別の教科 道徳」いよいよスタート!

1 「特別の教科 道徳」いよいよスタート!

1 道徳科はなぜ「特別の教科」なのか

 小学校では平成30年度から,中学校では平成31年度から「特別の教科 道徳」(道徳科)が始まります。なぜ,「特別の」という冠がついているのでしょうか。

 昭和33年の学習指導要領解説では,教科には
(1)教員免許状
(2)教科用図書(検定教科書)
(3)評点による成績評価
があるとしており,その考え方を踏襲すると,新しい道徳を他の教科と同じと考えることはできません。

 また,道徳教育は各教科,総合的な学習の時間や特別活動においても行うものであり,道徳科は,それら学校教育全体で行われる道徳教育の「要」として位置づけられているのです。


2 道徳教育が目ざすもの

 教育基本法第一条には,教育の目的として「教育は,人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」と規定されています。この「人格の完成」の基盤となるのが道徳教育です。人間観,世界観など,人として他者と関わり生きていくうえで必要なことが凝縮されています。
 それでは,道徳教育が目ざすものはなんでしょうか。それは道徳性の育成です。新学習指導要領の第1章総則では,次のように示されています。

「道徳教育は,教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき,自己の生き方を考え,主体的な判断の下に行動し,自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことを目標とすること。」
(中学校学習指導要領「第1章総則 第1 中学校教育の基本と教育課程の役割2(2)」より。太字は編集部。)


 さらに道徳科の「目標」では,より具体的な記述がされています。

「第1章総則の第1の2の(2)に示す道徳教育の目標に基づき,よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため,道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ,物事を広い視野から多面的・多角的に考え,人間としての生き方についての考えを深める学習を通して,道徳的な判断力,心情,実践意欲と態度を育てる。
(「第3章特別の教科 道徳 第1目標」より。太字は編集部。)

 人間は道徳性を有することで,本来的なあり方生き方を通してなされる諸々の道徳的行為を可能にしています。「特別の教科 道徳」を実施することにより,次代を担う子どもたちの道徳性を養うことが求められています。


3 教科化の背景

●いじめの問題

 これまでも「道徳の時間」はあったのに,なぜいま道徳は「特別の教科」になるのでしょうか。

 その理由の一つに,いじめの問題があります。いじめはよくないことである,ということはほとんどの生徒がわかっています。しかし複数の人間がいる以上,そこにはなんらかの格差が生じたり,グループ化が進んだりして異なる他者が生まれてきます。いじめを苦にして自ら命を絶つ痛ましい事件が繰り返し起きていることから,国は平成25年に教育再生実行会議を立ち上げ,「いじめ問題等への対応について」の提言をまとめました。平成28年11月,当時の文部科学大臣は次のメッセージを出します。

―いじめられた子供は,学校に通えなくなったり,心身の発達に重大な支障を生じたり,尊い命が絶たれるという痛ましい事案も発生しています。いじめた子供も,法律又は社会のルールに基づき責任を負わなければならない場合があるとともに,その心に大きな傷を残します。「いじめのつもりはなかった」,「みんなもしていたから」ではすみません。また,いじめられている子供を見ていただけの周囲の子供も,後悔にさいなまれます。  子供たちを,いじめの加害者にも,被害者にも,傍観者にもしないために,「いじめは許されない」ことを道徳教育の中でしっかりと学べるようにする必要があります。―
(「いじめに正面から向き合う『考え,議論する道徳』への転換に向けて」より一部抜粋。)


 道徳教育の実効性が,強く求められています。

●道徳教育が抱える課題

 教育再生実行会議の提言を受けて,「道徳教育の充実に関する懇談会」が文部科学省に設置されました。道徳教育の課題と教科化に向けた活発な議論のなかで,次のような指摘がなされました。

量的課題
・歴史的経緯に影響され,いまだに道徳教育そのものを忌避しがちな風潮がある。
・他教科に比べて軽んじられ,他の教科等に振りかえられている。

質的課題
・教員をはじめとする教育関係者にも道徳教育の理念が十分に理解されておらず,効果的な指導方法も共有されていない。
・道徳教育に関する理解や道徳の時間の指導方法について,地域や学校,教師間の差が大きい。
・授業方法が読み物の登場人物の心情を理解させるだけなどの型にはまったものになりがちである。
・学年が上がるにつれて,道徳の時間に関する児童生徒の受け止めがよくない状況にある。

4 教科化すると,ここが変わる

 これらの議論を受けて平成27年3月,学習指導要領が一部改正,告示され,道徳は「特別の教科」として位置づけられました。教科になると,これまでとはどのようなことが変わるのでしょうか。

履修の義務
 小学1年生は年間34時間,小学2年生から中学3年生までは年間35時間の授業を行うことが義務づけられます。(⇒量的課題の解消)

検定教科書の使用義務
 主たる教材として,検定教科書を使用することが義務づけられます。これまで学校や自治体ごとに開発してきた教材も活用し,実のある授業を行う必要があります。(⇒質的課題の解消)

評価の導入
 教科化すると,評価も導入されます。道徳科においても,評価は,生徒が自らの成長を実感し意欲の向上につなげるために,教員が生徒の学習状況を把握しその結果を踏まえ自らの指導について改善を行うために,必要なものです。新学習指導要領解説では評価についての記述が充実し,評価の意義や考え方として,次のようなことが示されています。

・道徳性は,生徒の人格全体に関わるものであり,数値などによって不用意に評価してはならない
生徒の学習状況や道徳性に係る成長の様子を様々な方法で捉えて,個々の生徒の成長を促すとともに,それによって自らの指導を評価し,改善に努める。
・他の生徒との比較による評価ではなく,生徒がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め,励ます個人内評価として記述式で行うこと。
・個々の内容項目ごとではなく,大くくりなまとまりを踏まえた評価とすること。
(太字は編集部。)


 さらに,評価に当たって重視すべき点として次のようなことが挙げられています。

・他者の考え方や議論に触れ,自律的に思考する中で,一面的な見方から多面的・多角的な見方へと発展しているか。
・道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているか。



2 「考え,議論する道徳」に向けて→


「中学校道徳特設サイト」へ