教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.1 (中学校版)
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 携帯電話を一人一台もち,一家に一台パソコンがあるのも珍しくない,全国の小中学生にタブレット端末が配布されるまでになった現代社会。この一年間だけを見てみても,オンライン環境を利用した在宅ワークの浸透など,社会は大きく変化しています。急激に進む情報化の中で,私たちはどのように生活していけばよいのでしょうか。これは,大人である私たちにとっても難しい課題です。このめまぐるしく変わる,予測困難な時代を生きていくことになる子どもたちには,今まで以上にたくさんの「力」が求められているといっても過言ではありません。 情報通信技術が発達した現代では,たくさんの情報に気軽に触れられるようになっただけでなく,SNSを使ってだれもが情報の発信者となることができるようになりました。情報を批判的に検証し取捨選択を行う「力」は,必須ともいえるものになってきています。文部科学省からは,情報モラル教育の充実を目ざした,児童・生徒向けの啓発資料が盛んに配布されています。フェイクニュースの実態について報じるニュースなど,いわゆるメディアリテラシーの必要性を訴える情報も,現代にはあふれています。 今回は,中学校社会科の授業の中で,情報の多様性と,情報モラルに関わる力の育成を目ざして行った授業実践を紹介します。 現代社会において,多様な情報メディアが存在し,それぞれが目的に応じて,情報を伝えるためのさまざまな工夫を凝らしていることへの理解をテーマに行った授業です。公民的分野の現代社会「情報化」について扱うパートで行いました。 授業では,実際に新聞社やテレビ局が行った世論調査を活用しました。今回行った授業では,例として憲法9条改正についての世論調査を紹介しました。まず,授業ではあえて調査の結果は示さず,質問と回答項目だけを投げかけます。授業実践 導入~世論調査に答える社会教科の視点あふれる情報をどのようにとらえるか〜情報を冷静に読み取り,たくましく生き抜く生徒の育成を目ざして〜千葉大学教育学部附属中学校教諭 河か西さい 麦ばくはじめに 次に,これらの質問に対し,実際に生徒自身に答えてもらいます。同じテーマの質問であるのに,質問の仕方や選択肢によっては回答や意見が変わる生徒もたくさんいました。選択肢の中に「どちらとも言えない」があると,それを選ぶ生徒もいました。大変興味深いことに,どの学級で実施しても,賛成,反対等の生徒の回答の比率は,報道各社がとった世論調査と近しいものになりました。 クラス内での集計結果を公表すると,生徒たちからはさまざまな反応が現れました。それぞれの反応に対してなぜそう感じたのかを説明させると,次のような言葉が出てきました。回答に迷ったときには,中立の選択肢を選んでしまう。「賛成」・「反対」と「必要がある」・「必要がない」は,意味が違うのではないか。質問の内容が難しいと,なんとなく「賛成」とは答えにくい。質問の意図がわからなかったから,「わからない」にした。          首相が憲法9条に自衛隊の存在を明記する意向を表明したことに賛成か。賛成 55.4% 反対 36.0%          首相は憲法9条について戦争放棄や戦力を持たないことを定めた項目はそのままにし,自衛隊の存在を明記する項目の追加を提案。このような9条の改正をする必要があるか,必要はないか。必要がある 41% 必要がない 44%          首相が憲法9条の1項と2項はそのままにし,自衛隊の存在を明記する改正案に言及した。この案に賛成か反対か。賛成 28% 反対 31% わからない 32%          首相が憲法9条の1項と2項を維持したうえで自衛隊の存在を明記するとしたことに,賛成か反対か,どちらとも言えないか。賛成 32% 反対 20% どちらとも言えない 41%A社(新聞社)B社(新聞社)C社(新聞社)D社(テレビ局)12現代的な教育課題とこれからの授業デザインー教科の視点 社会特集

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