教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.1 (中学校版)
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 私たちは,中学英語教科書『ONE WORLD』3年のFurther Reading 3でご紹介いただいている,児童労働の解決に向けて設立されたNGO「Free The Children(FTC)」のパートナー団体,NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン(FTCJ)です。「子どもを助けられるのはおとなだけじゃない」をモットーとする私たちの活動や,学校の先生方対象のプログラムなどをご紹介します。 1995年4月,カナダのトロント近郊に住む12歳のクレイグ少年が,マンガを読もうと新聞に手を伸ばすと,児童労働廃絶に向けて活動していた12歳の元児童労働者イクバル少年が殺される,という記事が目に入りました。大きな衝撃を受けたクレイグ少年が児童労働について調べていくと,2つのことが気になったといいます。まず,子どもに分かりやすく児童労働のことを解説する書籍はなく,教えてくれる人もいなかったということ。そして,児童労働は子どもの問題なのに,子どもが関わっている団体は1つもなかったということ。 子どもとしてこの問題を見過ごせない,というクレイグの想いに,クラスメート11人が賛同。放課後にクレイグの自宅に集まって活動を始めました。仲間が全員12歳だったことから,グループ名は最初「12人の12歳」に決定。しかし,1週間後に一人が13歳になったことから,グループ名の変更に迫られたという微笑ましいエピソードがあります。その後の話し合いで「子どもに自由を!」という願いを込めてFree The Childrenは誕生しました。 クレイグらは児童労働の廃絶に向けた署名運動を実施することから始めました。しかし,そのような取り組みをするなかで「子どもなんかに何もできない」「難しい国際問題に取り組むのはおとなになってからやればよい」といったさまざまな批判的な声を,子どもからもおとなからも受けたそうです。 児童労働の実情を知り,知識を深めることの必要性を感じたクレイグは,児童労働者に出会うため,南アジアを訪ねることにしました。そこで彼は,予想をはるかに上回る危険かつ過酷な環境で多くのすべては,12歳の少年からはじまった子どもが働いているのを目の当たりにします。親の借金のかたに売られ債務奴隷として働く子ども,炎天下の中で一日中農作業に従事する子ども,早朝から夜遅くまで住み込みでメイドとして働く少女など,さまざまな状況で働く子どもたちに出会いました。彼らの多くが,いつか学校で学びたいという願いを胸に劣悪な環境で働いていました。絶望的ともいえる状況に,クレイグは子どもの自分にできることはないのかもしれないと,悲嘆に暮れました。しかし訪問したインドで,貧しい人々を救う活動を続けてきたマザー・テレサや,2014年にノーベル平和賞を受賞したカイラシュ・サティヤルティ氏に会い,児童労働の解決には子ども自身が関わることが重要であるとアドバイスをもらい,意識を新たにしたといいます。 カナダに帰国したクレイグは,書籍や動画を通じて児童労働の現状を伝えながら,「子どもにだって,変化を起こす力がある」というメッセージを発信しました。2016年には,子どもだけでなくどんな立場の人も変化を起こせることを伝えるため,団体名をFTCからWEに変更。途上国で学校や井戸,病院の建設や,貧困家庭の収入向上支援を行うなど,国際協力事業に取り組みました。 FTC設立から2020年までの25年間で,支援する途上国9か国で1000校以上の学校を建設し,毎日20万人もの子どもが教育を受けられるようになりました。同時にソーシャルビジネス(フェアトレー英語教科の視点子どもにも世界は変えられる認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン代表 中なか島じま 早さ苗なえ建設した新しい学校で交流する,日本の中学生とインドの子どもたち20現代的な教育課題とこれからの授業デザインー教科の視点 英語特集

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