「図書の時間」がある小学校と比べ,中学校では,POPづくりやビブリオバトルなどのイベントを別にすれば,地味で継続的な読書活動はなかなかとりにくくなります。朝の読書はあっても,ただ読書させるだけでは意味のある学びになっているのか確信も持ちにくく,特段の読書活動に取り組まない先生方も多いのではないでしょうか。 しかし,読む力を伸ばすには時間のかかる地道な練習が必要です。教科書を読み解くだけでは,触れる文章の量や,得られる語彙やスタミナが圧倒的に足りません。子どもたちが日々本を読むことなくして,読むことの教育は十分にはなしえないのです。 したがって,読書活動を通じて読む力を伸ばす観点から言えば,やはり国語の授業の中で実際に本を読む時間が必要です。そして,「読む力を育てる読書活動」は,自由な読書とは異なります。本稿では,実際に本を読むことを念頭においた読書活動の中で,読む力を伸ばす3つのコツをご紹介しましょう。 第一に,インプットやアウトプットの場をつくりましょう。このうち,インプットについては,教科書での学習と関連づけることが大切です。 例えば,教科書の文学教材で,語り手について学んだら,その後に自分で文学作品を読む読書単元を設けて,語り手と語りの効果に注目して読むように促します。また,説明文教材を使って,語り手が自分の主張を読者に伝えるために用いた工夫について学んだ後で,自分で選んだノンフィクションの本で,語り手の工夫を探す活動もできます。 同時に,知識や思考をアウトプットする作業も重要です。それが子どもたちの思考を促すと同時に,私達教員にとって評価の材料ともなるからです。 私が取り組んでいる読書の授業では,「カンファランス」といって,読書中の子どもたちに実際にインタビューします。子どもたちにさまざまな質問をコツ①インプットやアウトプットの場をつくるする中で,その子が適切なレベルの本に出会っているかどうか判断し,必要に応じて助言するのです。アウトプットの形としては,読書ノートを書いてもらうのもよいでしょう。私は読書ノートに必ず「今回読んだページ数」を書いてもらうのですが,これも,その子のページめくりの速度,これまでの本と比べての速度の変化など,さまざまな情報がわかります。 もちろん,このインプットとアウトプットを関連づけることもできます。例えば,「教科書で語り手についてインプットしたあと,自分の選んだ本で語り手について注目しながら読み,それについて発見したことを書く」活動が可能です。もっとも,「手段としての読書」が強調されすぎて読書の楽しみを毀損することに,注意は必要ですが……。 読書で読解力を伸ばすには,自分に合ったレベルの本を幅広く,たくさん読むことが必要です。そのための出会いの場をつくることが,第二のコツです。 でも,「本当ならその子の幅を広げるような本を紹介したいけど,そのための自分の読書時間はとうてい確保できない」という悩みを持つ先生も多いのではないでしょうか。この場合,新しい本の出会いは,もっぱら子ども同士の紹介に頼ることになりがちです。しかし,これは確かに強力ですが,同じ味わいの物語ばかり流行することになり,幅の広がりは生みにくくなります。 そこで私は,同僚にもお願いして授業の冒頭5分に本の紹介に来てもらっています。週1回,色々な教員が本の紹介に来るだけなのですが,子どもたちにとっては本を通して教員の思わぬ一面が見られる面白い機会のようで,実施しない日は「今日は来ないの?」と聞いてくるほど。私の勤務校は幼稚園から中学校まであるので,中には,読み聞かせをしてくれる保育スタッフもいます。 新しい本との出会いの場をつくるうえで,留意したいのがノンフィクションの扱いです。中学生は,読書好きの子でも,物語だけ読む子がほとんど。意識的に出会う機会を用意しなければ,ノンフィクコツ②出会いの場をつくる国語教科の視点国語の授業に,読む力を育てる読書活動を軽井沢風越学園教諭 澤さわ田だ 英えい輔すけ読む力を育てるには,まず実際に読むことから8現代的な教育課題とこれからの授業デザインー教科の視点 国語特集
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