ションには出会えません。それなのに,高校になると大学入試を意識してか,中学教科書の説明文や評論文よりも,ずっと難しい評論が増えてきます。中学校段階でも,高校の学びを視野に,ノンフィクションの文体や語彙に少しずつ親しんでいきたいものです。 そこで,私は「ノンフィクション月間」という,ノンフィクションの本を読む単元を実施しています。清教学園探究科の片岡則夫氏の「新書回転寿司」に倣って,机の上にノンフィクションの本をずらっと並べ,数分の「お試し読書」をする。そして,気になった本を読書ノートに「気になる本リスト」として書き込んで,そこから何冊か読んでいくというもの。こうして,ノンフィクションとの出会いの機会を確保します。中高向けのノンフィクションシリーズとしては,岩波ジュニア新書やちくまプリマー新書が有名ですが,平均的な中学生には難しく感じられるようです。そこで私は「中学3年生で岩波ジュニア新書を読める」を目標に,小学校高学年から読めるような,「ちしきのもり」「ポプラ社ノンフィクション」「世の中への扉」シリーズや,「青い鳥文庫」のノンフィクション作品を多く集めています。 三つめのコツは,交流の場を設けること。石川晋氏の『学び合うクラスをつくる!「教室読み聞かせ」読書活動アイデア38』は,「教室読み聞かせ」の効果として,人と人の間の緩衝物として本が置かれることで,コミュニケーションが円滑になることをあげています。教員と生徒,生徒同士の直接的なコミュニケーションが難しくなってくる思春期以降の年齢において,それを媒介し,学び合う関係性をつくる役割としての本に注目した提案といえるでしょう。 私の授業でも,読書の授業の冒頭には教員や生徒が読み終えた本の紹介をして,授業の最後には,今日読んだ箇所の紹介を全員がお互いに共有し合うことが普通になっています。この共有の時間は,アウトプットの機会であると同時に,本を介して他者を知り,学び合う集団をつくる時間としても重要です。 共有の方法はさまざまです。ペアでやることも,4人程度のグループでやることもあります。話す内容が完全に自由な時もあれば,お題を定めていることもあります。サイコロトーク形式で,例えば1の目が出た人は「この物語を一言で言うと……」,2コツ③交流の場をつくるの目が出た人は「この物語の主人公の性格は……」など,話し始めのパターンを複数用意することもあります。 最近よくやるのは,ペアでミニホワイトボードを使う方法です。例えば先日の授業では,その日に読んだ本について,「グッとくる一行」というお題で,ペア活動をしました。話す側がこのお題で2分間話すのを,聞く側は,ひたすらミニホワイトボードにメモをします。話す時間が終わった後,聞く側はメモを見ながら,1分で相手の話を再話するのです。このやり方は,読書のアウトプットや交流になるだけでなく,生徒同士でお互いに聞き合う体験を積むことや,メモをとって話を聞く練習にもなるので,個人的には手応えを感じている共有方法です。 この例のように,実際の授業では,3つのコツを組み合わせた読書の授業を構想します。例えば,教科書で説明文の単元を扱った後で,ノンフィクションの本を読む単元を構想してはどうでしょうか。まず,学校図書館にあるノンフィクションを集めて出会いの場をつくります。生徒がそこから本を選んで読み始めたら,教科書で学んだ説明文を読む技術を改めて紹介し,自分の選んだ本の中でそれを使ってみるように促しましょう。さらに,毎回の授業の最後には共有の時間を設けて,その日読んだ本についてミニホワイトボードを使ってペアで話す・聞く活動を取り入れてみましょう。 このようにすれば,限られた時間でも,「ただ読むだけ」で終わらない,読む力を育てるための読書活動になるはず。たくさん読むことを通じて,生徒の読む力を伸ばしていきましょう。3つのコツを組み合わせる9現代的な教育課題とこれからの授業デザインー教科の視点 国語特集
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