秋の南の空には,みなみのうお座のフォーマルハウトがぽつんと光っています。その東側,いて座との間に,暗い星ばかりですが逆三角形の星並びを見つけることは,それほど難しいことではないでしょう。これがやぎ座です。星座絵をご覧ください。立派な山羊がいると思ったら,ちょっと後ろの方が変ですね。前足の方はちゃんとした山羊なのに,後ろ足の方はなくて,魚の尾っぽになっています。これにはこんなお話があります。
 やぎ座はもともとは牧神パーンという変身の得意な神様でした。ある日,神様たちが集まって宴会をしていたところに,怪物テュホンが現れたからさあ大変。テュホンは大神ゼウスでさえ手を余す暴れん坊です。神様たちはいろいろな動物に変身して逃げました。もちろんパーンも得意の山羊に変身して逃げました。美の女神アフロディテとその息子は魚に変身して(魚座)川に飛び込みました。それを見たパーンも,ならば私もと魚に変身しようとしました。ところがあわてていたために,変身できたのは後ろ足が魚の尾っぽになっただけでした。このあわてん坊ぶりを見ていた大神ゼウスは,おもしろがって,その姿を星座にしてしまったということです。ですから,ちょっと恥ずかしくて暗い星ばかりなのかもしれません。このやぎ座の逆三角形の星並びは,見方を変えると空にあいた大きな口の形にも見えます。そこで,大昔の人たちは,ここから死んだ人が天に昇っていくと考えていたようです。

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