オリオン座は実にぜいたくな星座です。秋の夜空には南の魚座のフォーマルハウトしか1等星がなかったのに,オリオン座には1つの星座で2つの1等星(ベテルギウスとリゲル)を持っています。しかもかたや赤色,かたや青白と色の対比もまた星並びも申し分のない配置です。
 オリオン座は,方位を知る上でも大変役立ちます。東から出てくるときは,オリオン座の真ん中にある三ツ星は縦に並んで1つずつ出てきます(写 真1。中でも三つ星の中で最初に出てくる星は真東から出て,真西に沈みます。)が,西に沈むときは,三ツ星が横に並んで沈んでいきます(写 真2)。この姿も確かめてみるとおもしろいことでしょう。
 三ツ星の下には小三ツ星という星並びがあります。その小三ツ星の真ん中は,実は星ではなく星雲です。目のいい人は肉眼で。双眼鏡を使えばはっきりわかるほど大きい星雲。これがオリオン座の大星雲M42(写 真3)です。この星雲の中心部には,トラペジウムというまだ星になりたての4つの星が輝いています。すばる望遠鏡などの写 真でご存知の方もいるでしょう。
 そのほかにも馬頭星雲(暗黒星雲が後ろから来る光を隠し,その形が馬の頭の形に見える)やウルトラマンで有名になったM78星雲などもあります。
 このオリオン座には,夏の星空で紹介したさそり座とのお話のほかに,こんな悲しいお話しもあります。  月の女神で弓矢の名手でもあったアルテミスは,漁師で勇猛果敢なオリオンのことが好きでした。ところがアルテミスの兄,アポロン(太陽神)はそんなオリオンが嫌いでした。
 ある時,アポロンがアルテミスに言いました。「おまえが弓の名手だとしても,海の彼方に見える,あの豆粒ほどの的を射ることはできないだろう。」と。アルテミスは答えます。「何を言うのお兄さん。見ていらっしゃい。」そういうときりきりと弓を引き,びゅんと矢を射りました。矢は はるか彼方に見える的めがけて一直線。そして見事に命中しました。
 翌日,アルテミスが海岸を散歩していると,大好きなオリオンが変わり果 てた姿で海岸に打ち寄せられていたのです。そこにはアルテミスの放った矢が突き刺さっていました。アルテミスは悲しみのあまり姿を隠してしまいました。そんな様子を見た神はオリオンを星座にして天に上げ,アルテミスの悲しみを和らげようとしたのです。
 そんなことがあったからでしょうか,月は太陽の近くに見えるときはやせ細って姿を見せようとせず,太陽から離れて見えるとき(一番離れたときが満月)は姿を見せてくれるのかもしれません。

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