天の川の中を悠然と飛ぶはくちょう座は,大神ゼウスの変身した姿です。形の整った十字形をしていますから,探すのは案外楽かもしれません。その形から南国の空で有名な「南十字星」に対して,「北十字」とよぶこともあります。ですが,この十字形,東の空からのぼってくるときには横に寝そべって出てきますが,西の空に沈んでいくころには地上に立つような形で沈んでいくので,注意が必要です。星座早見盤があれば,確かめることができるでしょう。そうすると,夏の星座のはくちょう座が,クリスマスのころの夕方には西の空で十字架として立つことがわかります。
 白鳥の尻尾という意味をもつデネブは1等星ですが,こと座のベガに比べると,ちょっと暗いことがわかるでしょう。くわしくいうと,1.3等星です。白鳥のくちばしという意味のアルビレオは,肉眼では1つの星にしか見えませんが,望遠鏡で見るとオレンジ色の星とコバルトブルー色の星が近くにくっついて見える大変美しい二重星で,「天上の宝石」とよばれています。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」にも出てくるので,知っている人もいるでしょう。
 また,デネブより北の方には,写真にとると,北アメリカ大陸の形によく似ている北アメリカ星雲が写 ります。このあたりは天の川の中にありますから,双眼鏡で見るとたくさんのきれいな星々が目の中に洪水のように飛び込んできます。

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