2003 spring

国立科学博物館
教育部 濱田 浄人 さん
インタビュー

 国立科学博物館は,日本初の自然科学系博物館です。教育博物館として1877年に開館。理工学や自然史の研究を行うとともに,科学教育の普及活動にも積極的に取り組んでいます。
 そこで,活動の具体的な内容について,教育部の濱田さんにお話を伺いました。

(聞き手:編集部 岡本)

学習機会の充実

──国立科学博物館では,科学教育の普及のために,様々な講座や観察会などを催されていますね。

濱田さん (以下,濱田)「科学に対する学習機会の充実を図ることを目的として,毎年いろいろな講座や実習,実験,観察会などを企画しています。それらは,性格上,大きく2つに分けられます。
 1つは,科学に対する一般的な興味をもっている幅広い層の方々へ向けた企画で,飛び入り参加が可能なものもあります。例えば,『かはく・たんけん教室』では面 白い科学工作や観察の仕方をいろいろ紹介していますが,館内で毎日午後1時から行っていますので,興味のある方はどなたでも入室することができます。
 もう1つは,内容をもう少し具体的に絞り込んだ企画で,こちらは事前に申し込みが必要になります。内容によっては参加費がかかります。『自然観察会』や『子どもの土曜教室』などは,あらかじめ参加者を募って,野外に出て観察したり実験や工作を行ったりしています。
 また,夏休みの時期には毎年『夏休みサイエンススクエア』を開催して,多くの方々に科学の面 白さを体感してもらえるよう,様々なテーマで展示や工作などを行っています。」

学習支援

──講座や観察会などの充実によって,科学の楽しさにふれる機会が増えますね。そのほかには,どのような取り組みをしていますか?


濱田 「いままで話をした企画は,多くが当日限りの単発的な学習機会の提供でした。そこで,もう少し参加者と継続的に関わりながら学習を支援するという観点から,いくつか取り組みを行っています。
 その1つに,『かはくたんけんクラブ』があります。小学5年生から中学3年生を対象に,夏休みや土日を利用して,十数回にわたって講義,実験,現地見学,討論などを重ね,最後に成果 を発表するというものです。テーマは,一昨年がエネルギー,昨年が人体でした。」

──子どもたちは,『かはくたんけんクラブ』の存在をどうやって知ったのでしょうか?

濱田 「直接ご来館して知ることもあれば,保護者の方が『かはくニュース』という冊子を見て知る場合もあります。また,インターネットで知ったという子どももいます。
 そのほかの取り組みとしては,小中学生を対象にした『博物館の達人』制度を設けました。科学館や動植物園などを利用した学習の記録10回分と,申請書,感想文を送っていただいた子どもたちの中から,審査の上で認定書を発行するというものです。日本全国からご応募いただいています。
 また,昨年は『高校生のための研究体験講座』という,3〜4日間のフィールドワークを通 して自然史研究の方法を体験してもらう講座を,動物,植物,地学の3コースに分かれて実施しました。動物コースはイルカウォッチング,植物コースは八ヶ岳の植物,地学コースは伊豆大島の地質を研究して,どれも盛況でした。」

学校との連携

──継続的な取り組みは,参加者にとっても得られるものが大きいでしょうね。次に,学校などの教育機関との連携についてお聞かせください。

濱田 「学校の先生向けに『理科・総合的な学習の時間のためのティーチャーズガイド』を作成しています。この小冊子では,理科や総合的な学習の時間の学習指導にあたり,博物館ならではの学習資源を活用して,体験的な学習を展開していただくことをねらいとしています。利用方法のご相談は,ティーチャーズセンター(03-5814-9895)にお問い合わせください。
 学校や社会教育施設などには,岩石鉱物や化石をはじめ,隕石,頭骨,骨格などの教育用標本を貸し出しています。輸送料のみで貸し出してますので,ご利用いただければと思います。
 また,講師に関する情報の提供も行っています。サイエンス・ボランティアとして登録された大学の科学者や企業の技術者を,催し物での講演や実験指導などにご活用いただくものです。こちらに関しては,事務局(03-5814-9874)までお問い合わせください。」

教育ボランティア

──教育ボランティアというのは何ですか?

濱田 「館内の施設や展示の案内をするスタッフを,ボランティアで募る制度を導入しています。都内および都内近郊の18歳以上の方を対象に,現在,約220名が登録されています。一時期は主婦の方が多かったのですが,最近は企業などを退職された方が多いようです。館内では黄色い服を着て,週1回,施設や展示の案内のほか,子どもたちに助言もしています。」

指導者などの研修

──最後に,小学校の先生方が参加できるような研修がありましたらご紹介ください。

濱田 「指導者の資質向上を図る研修として,小学校の先生方向けには,理科担当教員研修があります。小・中・高等学校などの理科担当の先生を対象に,学校の教育課程とはちがう科学そのものの面 白さを知ってもらうために,自然史を中心とした講座や実習を行っています。3日間のプログラムを受講いただき,修了されると証書を発行します。昨年は,動物,植物,地学,人類の4コースに,合計69名の先生方にご参加いただきました。そのうち,小学校の先生方は,18名でした。
 また,こうした研修制度ではなく,先生方の理科部などの研修として施設を利用される場合もあります。つい先日も,東京都内のある区の理科部の先生方が団体で研修に来られました。そのときは,館内の見学と講座としてレプリカの作成を行いました。講座の内容を,学校の授業や科学クラブなどに生かしていただけたらいいと思います。」

──国立科学博物館が教育普及のために行っている幅広い取り組み,今回は,そのほんの一部ではありますが,知ることができてとても参考になりました。どうも有り難うございました。


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