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教育研究所
書評:寺崎千秋の気になる1冊 772
「「資質・能力」と学びのメカニズム」 ( 那須正裕著 東洋館出版 2017.5.30発行 本体:1850円)
今,各学校では,新学習指導要領の中核である「資質・能力」をどのように教育課程に位置づけ,教育実践を行えばよいかということに悩みながら取り組んでいることだろう。本書はこうした各学校・教師に具体的な理解と示唆を与える最適の書と言える。
著者は今回の学習指導要領の改訂過程に当初からかかわった学者。「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」(2012年)の委員,中央教育審議会「教育課程部会」「総則・評価特別部会」等々の多くの部会やワーキング・グループのメンバーとして。それだけに意味や内容がわかりやすい。
新学習指導要領が「学びの地図」と言われる意義,そうなる背景,内容と資質・能力の関係や子供との関係などについて,さらには資質・能力を基盤とする教育がどのようなものか,それを育む教育課程はどのように変わるべきなのか,教科の本質とは何か等に順に理解できるようにしてくれる。特に「主体的・対話的で深い学び」については,授業に直結する示唆が多く示されている。「学び」という営みの本質を捉えることの重要性を示し,授業づくりの三つの原理=有意味学習,オーセンティックな学習,明示的な学習を提示する。これらを授業改善に生かすことで子供の学びを深めることができるのではないか。