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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その1000
日本数学教育学会編著「算数教育指導用語辞典(第5版)」(教育出版 本体:4000円)
この辞典の編集が始まったのは確か昭和57年(1982年)だったと思う。H市教育委員会の新米指導主事の頃で,勤務終了後先輩に気を遣いながら東京教育大学附属小学校(現筑波大学附属小学校)へ通って,編集会議(初版)をしたことを懐かしく思い出す。この種のものとしては,初めてのことで,多くの出版社が「売れない」と腰を引いたのに,当時の教育出版の経営者が「良いものは,そこそこなら儲からなくてもいい」と快諾してくださり,やっと陽の目を見たいきさつを昨日のことのように思い出す。以来,徐々に評価されるようになり,版を重ねこと「第5版」,今やロングセラーとなっている。
この辞典の特徴は,単なる用語の解説ではなく,各学年でどのように指導されるのかポイントを簡潔・明確・平易に解説しているところにある。それだけに,算数教育の研究者,算数教育の指導者,算数科の授業実践者の座右の書として広く活用されている。
第1部......小学校1~6年にかかわる例えば数学的表現,ICT機器の活用,一般化・特殊化の考えなどの解説で,理論編の性格を持っている一般的用語65項目を収録している。解説は,「一般化・特殊化の考え」を例にすると,「1.一般化の考えとは」「2.特殊化の考えとは」「3.一般化・特殊化の考えをのばす指導」「4.一般化・特殊化の教育的価値」に加え,脚注で「一般化と抽象化の関係」及び関連項目の指示,研究した「ポリア」との関連,参考文献と,至れり尽くせりの構成である。
第2部......小学校各学年ごとの指導内容にする例えば関数関係,代表値,文字を使った式などの用語75項目について解説している。解説は,代表値を例にすると「用語の解説」「5年:測定値の平均」「6年:単位量当たりの大きさ」「1.平均の意味(いくつかの量をならした値など)」「2.平均の使われる場面(集団の傾向を表す値が必要な場合)」「3.平均の求め方(平均の計算)」「4.中央値(中央値,メジアンまたは中位数)」「5.最頻値(モードまたは並数,)」に加え,脚注で「平均値(相乗平均,調和平均,相加平均)」「仮の平均値の考え」についても解説している。
この辞典で基本を学び,書き込みをしたり,新しい情報を張り込んだりして「【自分流】算数教育用語辞典」を創ることをお勧めしたい。