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書評:小島宏の気になる1冊その1003

矢ノ浦勝之著「北陸四県「算数の達人」が学びをデザイン 算数『主体的・対話的で深い学び』実践12」 (小学館 本体:1400円)


 新学習指導要領の移行措置が始まって,先生方は,各教科の指導内容の「追加」と「省略」に神経をすり減らしている。それに加えて,「主体的・対話的で深い学び」に対応した授業づくりに頭を悩ましている。

 本書は,次のような構成で,「主体的・対話的で深い学び」の授業について具体的に提案している。これを追試的に実践しても,クリティカル・シンキングをして自分流に改善しても活用できる。また,他教科等の授業づくりのヒントにすることもできる。

 新潟県・富山県・石川県・福井県の四県とも「算数授業づくりの『これまで』と『これから』」の理論編と,新潟県の実践例2年・6年・4年,富山県の実践例2年・3年・5年,石川県の実践例1年・4年・6年,福井県の実践例3年・5年・1年で,教育ジャーナリストの矢ノ浦勝之氏の臨場感あふれるレポートである。

 理論編の間嶋雅樹指導主事・富山大学岸本忠之教授・勝田敬子校長・対象秀哉校長の「これまでの算数授業を振り返り,それをどのように進化させていこうかという視点から提言している」ことは素晴らしい。特に勝田敬子校長の「何も新しいもの」ではないが,今まで追求してきた「課題(問題)に疑問を持ち,自力解決をし,それを友達と学び合い,学びを深めていく」ということを,さらにどう進化させていくかをさらに研究していきたいという主張に,本質を見た思いがした。合わせて,実践例が,授業者はもちろんのこと,指導してくださった校長先生や先輩の先生を中心にチーム学校として取り組んでいることに感動して読み終えた。