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書評:小島宏の気になる1冊その1007

C・M・ライゲルース,J・R・カノップ共著,稲垣忠・中嶌康二ほか訳「情報時代の学校をデザインする―学習者中心の教育に帰る6つのアイデア―」 (北大路書房 本体:2200円)


 著者は,アメリカの学校教育に関して,Society4.0(情報社会)になっているのに,Society3.0(工業社会)の単純作業に応じた学びしかされず,肝心の「問題発見・解決,創造性,チームワーク,クリティカル・シンキング,自己主導などの学びをしていない(はじめに)」と指摘している。日本も同様であろう。今やこの先のSociety5.0(経済発展と社会的課題を両立する人間中心の社会)を見通しているのに,学校教育はこれでいいものだろうか。

 新学習指導要領の移行措置,完全実施を進めている現在,じっくりと読み込んで,新教育課程の編成・実施,各教科等の指導計画・評価計画の作成・実施に反映させたい。

1章「本質的な変化のために(少数のニーズに応えること,すべてのニーズに応えること,情報時代の本質を探る,変わりゆく生徒の教育ニーズなど)」,2章「情報時代の教育ビジョン(学習者中心の指導,広がりのあるカリキュラム,調和のある人格を育む学校文化など)」,3章「新しいパラダイムの具体例(ミネソタ・ニュー・カントリー・スクールなど数事例)」,4章「どうやって変えていくのか?(パラダイム転換を促す方略,パラダイム転換を引き起こす原則など)」,5章「政府にできることは何か(テクノロジー・ツール開発の支援,好事例を生み出す支援,連邦政府の戦略など)」,各章の終わりに「この章の要約」があり,多忙な人(?)はまずここから読むこともいいだろう。
 巻末に,「付録A,B」「付録Cパラダイム転換へのツール」「参考文献」「索引」もあって,さらに学びたい人の便宜を図っている。

 なお,本書を読むと,何か自分の授業を観察されて「見直し,改善すること」を求められているような気持ちになるかもしれないが,それはあなたが向上を求め続けている良心的な教師である証である,その気持ちを素直に受け止めて,改善工夫されたい。目の前の子供たちのために。