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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その1009
「いじめ防止対策に係る事例集(案)」(平成30年7月の会議[資料2-3]文科省初中局児童生徒課)
いじめは今に始まったことではない。しかし,いじめが被害者の「自殺」というあまりにも悲惨な結果として顕在化し,社会問題になったのは1986年の中野のS君事件で,あまりにも悲しい事件で鮮明に記憶している。
その後どうなったであろうか。良い方向に変化していないという世間の捉え方を,自信をもって否定できないのは残念である。
それに国が本格的に取り組みだして,2013年に「いじめ防止対策法」を制定し,それに基づいて,文部科学省が「いじめ防止対策協議会」を設置し,2013年11月「いじめの防止対策推進法の執行状況に関する論議のとりまとめ」が提言された。
これを受けて,2017年3月「いじめ防止等のための基本的な方針」を改定するとともに,「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を策定した。ところが,各学校のいじめに対する指導・対応には温度差があり,悲惨な事案が後を絶たない状況にある。
そこに,「いじめ防止対策に係る事例集(案)」が公表されたことは大きな意義がある。おそらく,本年中には(案)が取れ,「いじめ防止対策に係る事例集」として公表されるであろう。この(案)だけでも,各学校・教師,保護者や地域住民の関心は高まるに違いない。この(案)を熟読し,自校のいじめに関する指導・対応を見直し,「いじめられる子のいない学校づくり」&「いじめる子のいない学校づくり」&「いじめを見過ごさない,許さない学校づくり」を進めていただきたい。
詳細は,直接読み込むことになるが,内容構成を紹介する。
1.いじめの定義・認知(小・中・高・特別支援7事例,)。2.学校のいじめ防止基本方針(中4事例)。3.学校のいじめ対策組織(小・中9事例)。4.いじめの未然防止に係る取組(教委・小・中・弁護士会6事例)。5.いじめの早期発見(教委・中・高8事例)。6.いじめへの対処(小・中・特別支援・教委8事例)。7.いじめの重大事態(小・中3事例)。
いずれも生々しい事例報告で,とかく曖昧で先送りになりがちで,悲しい思いをする子供がいること,痛ましいことになってしまう子供,反省し改めてもらいたいそれらにかかわった子供の指導・対応がいまだに続いている現場の参考になる。ぜひ,「いじめゼロ」に向かった行動を・・・。