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書評:小島宏の気になる1冊その1015
宮田珠己著「無脊椎水族館」(本の雑誌社 本体:1800円)
水族館紀行と銘打っているなんとも不思議な本である。ともかく目次を紹介しよう。
「無脊椎水族館のすすめ」,東京「葛西臨海水族館―ともかくこの空間にいるだけでリラックスした。薄暗くて,ひとの顔も見えず,音もあまりしない」,神奈川「新江ノ島水族館―もはやイルカやラッコの時代ではなく,世界は無脊椎を求めているのだ」,新潟「マリンピア日本海&寺泊水族博物館―なんじゃ,この生き物は」,福島「アクアマリンふくしま―水族館巡りにゴールはないのである」,神奈川「横浜・八景島シーパラダイス―冷え冷えとした青い空間には,自分の心の奥底に静かに沈殿していくような心地よささえ感じられた」,三重「鳥羽水族館―やはり変な生き物を見るのは楽しい」,山口「海響館」&大分「うみたまご」―おじさんは孤独もつらいし,荒波もつらいのである。赤い魚もきっとそう思ってここに群れているに違いなかった,兵庫「須磨海浜水族館―底に沈んでいるイカは,まるでネコのようにかわいい」,福井「越前松島水族館」&愛知「名古屋港水族館」―まったく海というのはよく次から次へと変な生き物を出してくるものだ,山形「加茂水族館―無脊椎動物こそが主食のごはんであり,海獣や魚はみんなミニサラダなのだ」,茨城「アクアワールド大洗―せっかく暗い場所に来たのに陽気になってしまっては,何のために水族館に来たのか分からない」,大阪「海遊館」&和歌山「京都大学・白浜水族館」―ヒトデだけ,ウニだけ,ナマコだけ,イソメだけといった無脊椎動物一点張りの水槽が並んで,まるで天国のようだ,和歌山「エビとカニの水族館」&「串本海中公園」―ここを借りて住めたら,どんなにか陰気にリラックスできることだろう,鹿児島「いおワールドかごしま水族館―もうだめだ,そう思った。こんないきものには勝てない」,「あとがき」という具合で,150余種の無脊椎動物が写真と簡潔な説明付きで紹介されている。
これを,ゆっくり見るだけで,その水族館に行っているような臨場感に浸れるし,近くに行った時にふらりと寄ってみたくなるような1冊であった。