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書評:小島宏の気になる1冊その1016

フィリップ・コトラー&ジョン・A・キャスリオーネ著,齋藤慎子訳&高岡浩三解説「コトラーの予測不能時代のマネジメント」 (東洋経済 本体:2400円)


 これからは予測が難しい時代だといわれつつも,その時代に適用するマネジメントについては,「適切の対策を講じ,果敢に実行することが重要である」というような曖昧なままであった 本書は,それに対して,できるだけ具体的な戦略と仕組みを提案したものである。

 <解説>高岡浩三「マーケティングの神様に学ぶ新しい現実に対処するしくみ」,序章「乱気流とカオスに対応する(注:Chaos=混沌,混乱状態,混じり合ってはっきりしない状態)」,第1章「ノーマルからニューノーマルへ~幸運から人は多くを学べるが,不運からはもっと多くのことが学べる(カオスを引き起こす可能性のあるものなど)」,第2章「乱気流への対応を間違うと命取り~人が貪欲な時は慎重に,人が慎重な時は貪欲に(乱気流時代に犯しやす過ち,目先のキャッシュのために人材を使い捨てにする過ち,社員研修や能力開発費を削減する過ちなど)」,第3章「カオスティクス・マネジメントの全体像~将来は予測可能,という幻想を捨てると,一瞬とても気が楽になる。あとは,この世で確実なことだけに対応できるよう専念すればいい。ただしそれは,不確実だということである。そうした能力の創造こそが,戦略の目的である(脆さと機会にうまく対処する,キーシナリオを構築するなど)」,第4章「カオスティクスによる戦略的対応~問題は,どう解決すればいいのかわからないことではなく,何が問題なのかがわかっていないことである(反応性・強靭性・弾力性の高い組織が生き延びる財政部門・IT部門・人事部門の対応,など)」,第5章「カオティクス・マーケティング戦略~自分は世界を変えられると本気で信じている人間こそが,本当に世界を変える(現状の方針や計画を疑ってみる,危機に対するありがちなマーケティングなど)」,第6章「波乱の時代を逆手にとる~防御側は常に,防御の優勢を得られたらただちに攻撃側に転ずるべきである(持続可能性のある企業に学ぶなど)」,「本書のまとめ」という構成になっている。

 どの章も,章末に「本章のまとめ」がついていて,読者自身が理解度を確認できるように配慮されている。ややずるがしこい気がするが,「本章のまとめ」を読んでから,本文を読むのもいいかもしれない。

 新教育課程の実施に当たって,学校経営にどのように取り組んだらよいか,校長先生,副校長・教頭先生,主幹教諭などミドルリーダーの先生方が,「企業」を「学校」に置き換えたときに,どのような戦略と仕組みとなるだろうかと考えると,数えきれない「智恵」を提供してくれそうな気がする。是非,熟読・玩味し,活用していただきたい。