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教育研究所

書評:寺崎千秋の気になる1冊 1022

デービット・アトキンソン著 『新・生産性立国論』 2018.3.4 (東洋経済新報社 本体:1500円)


 我が国はかつて世界で№1と言われるほどの経済成長を遂げた。しかしながら、その後は低下・低迷が三十年も続いている。教育界では貧困家庭の子供が学級の六分の一ほどになり、子供に様々な影響を与えている。この経済低迷の原因は世界のどこも経験したことのない人口減少、大激減であり、人口減少でこれまでの経済の常識が根本的に変わったと著者は論じる。 

 著者はかつて日本の不良債券の実態を暴いた著名なイギリス人アナリストであり、現在は京都の小西美術工藝社代表取締役社長、三田証券社外取締役。政府の委員や顧問なども努めている。日本文化にひかれ茶道に没頭するなど関わりを深め日本人以上に日本文化に詳しく、愛する人である。それだけに自分のことのように我が国の経済や文化の在り方に厳しい。

 「日本の労働者の質は世界最高レベル」にもかかわらず、「生産性は先進国最低レベル」とデータで示す。そのことは「経営者が奇蹟的に無能であることを意味する」と手厳しいが、読み進めていくと実感する。

 では、生産性を上げるとはどういうことか。政府は、企業経営者は何をすればよいのか。そして我々国民はどうすればよいか。氏の論を学び「生産性」についてじっくり考えてみよう。