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教育研究所

書評:小島宏の気になる1冊その1024

「教育研究2018年9月号」 (不昧堂出版 本体:787円)


 今月号の特集は、「自分に問える子どもを育てる」で、巻頭論文は、「主体的に自分に問い、行動し続けるための教室の言葉」筑波大学准教授長田友紀、「子ども『観過』の転換と授業づくりの課題」元琉球大学教授小田切忠人である。

 前者の論文で、主体性とは、「自分でやる(自ら考える、判断する、解決する、価値づけるなど)」と簡単に考えていたが、「ほっておいても勝手にどんどん物事をやる人間」で「ただやるのではなく、それまでの失敗や成功の経験を踏まえ、考えながら取り組む」、つまり「見通しを持ち、やりながら考えを修正し続けている」状況だと、一歩深く学ぶことができた。...ということで、タイトルに関わる多くのことを考えさせられた。

 また、後者の論文からも、「子どもは小さな大人である」から「子どもは小さな大人ではない」へ変換し、大人と区別されて扱われるようになった。でも「子どもの権利条約」によって「子どもも権利の主体者として大人と同様である」と子ども観がまたまた変換された。ということで、この子ども観の捉え方をするならば、教科等の学習で一人一人の学びについてどのように向き合ったらよいものか考えさせてくれる。

 具体的な授業実践レベルでは、社会科「よりよい社会の形成に向け、問い続ける子どもを育む」由井薗健、理科「問いが変遷する授業で、課題設定能力を鍛える」佐々木昭弘、音楽科「自分に問うことのできる音楽の授業とは―子ども同士がガチンとぶつかり合う授業」と、具体的に提案していて、教科を超えて参考になる。

 おなじみの「研究発表」では、体育「共通課題をきめる授業―5年生・長なわダブルタッチ」平川譲、家庭「活用を見据えた指導を考える―知的にたくましく、安全な活動とは」横山みどり、算数「不確定な事象について考察する場を作る―6年場合の数」夏坂哲志、算数「割合が苦手な子どもたちのために分数の持つイメージを活用する」田中博史、国語「WHICH型課題の国語授業づくり―めあてとまとめの授業を変える」桂聖、国語「筆者の主張を読む説明文の授業」青木伸生も、読み応えがあり、自分流の授業づくりのヒントをたくさん見つけることができる。