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書評:小島宏の気になる1冊その1027

赤塚不二夫「天才バカボン㉑」(竹書房文庫 本体563円)


 この巻は、「週刊少年マガジン」昭和41年5月23日号以降に連載されたものを収録したものだ。なぜ、覚えているかというと、新米教師2年目で、あれこれ悩み事があって、下宿の部屋で一人さみしく「漫画でも読んで気を紛らわすか」という心境にあったからだ。(本当は、焼き鳥屋で一杯やって憂さを晴らしたり、音楽を聴いて心を落ち着かせたり、教育書や哲学書を読んで頭の中を充実させたりしていた。本当だよ!!)

 最近、ごみ屋敷ほどではないが、長年のあれこれがどうしようもないくらいたまったので整理していたらこの漫画が出てきた。

 表題からして、「すみませんのあやまり男」「恐怖の無責任先生なのだ(注:あくまでも漫画だが、それでいて、教師に何かを問いかけているようにも思えるのだ...。)」「ラブレターでヤブレター」「食いしんぼうのドロボウなのだ」「拳銃をすてた目ン玉警官なのだ」など、徹底してバカボン風である。

 現在の激情的な表現で直感的に読み進めていく漫画とは異なり、落語を寄席でじっくり1時間ほど楽しんでいるようなもので、吹き出し(セリフ)が文になっていて、筋が通って(?)いるのだ。つまり、昔の漫画は読んで楽しむものだったのだ。だから昔は、親から「漫画ばかり『読んでいる』と〇〇(注:ウマ+シカ)になるよ」とよく言われたものだ。