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書評:小島宏の気になる1冊その1036

「SOSの出し方に関する教育を推進するための指導資料【活用ガイド】」(平成30年2月 東京都教育委員会 HPからダウンロード可能)


 子供が行き詰った時にとる行動の1つに「自殺」があります。その直前に,友達,保護者,家族,先生,相談員などの「誰か」が,子供の出したSOSに気づき,あるいは相談を心で聴き尽くして,防ぐことができたという例も少なくありません。無限の可能性と,やりたい事をいっぱい持っている子供たちの人生を,納得いくまで歩ませてあげるためにも,本冊子の意図を受け止めて,真剣に「SOSの出し方に関する教育(子供が悩みを抱えたときに助けを求める,身近な大人がそれを受け止めることを目的とした教育)」を,チーム学校として,保護者・PTAなどと連携して進めたいものです。

 でも,実際は,そんなに簡単にはいきません。「苦しい心の内を語る」のですから,それを受け止めるのも「心で聴き取る」ことが必要だからです。本資料で,基本的なことを学び取り,「SOSを出したほうがいいよ」「それを本気で受け止めるからね」と指導する(知らせる)とともに,SOSを出した子供に「SOSのだしもとになっていることを聴き出し,それを克服できるように支援する」ことのできる能力を身に付ける必要があります。

 本資料はそれらを学び取るすぐれもの(参考書)です。周りの先生方や専門スタッフとともに学び合い,情報交換して,「SOSを出せる雰囲気」を醸成し,「SOSを出させ」,それをみんなで支えるようにしたいものです。

 内容は,1「自殺対策に資する教育の内容」2「SOSの出し方に関する教育の授業の進め方(指導計画,教材,授業形態,授業展開,DVD,CD)」,「SOSの出し方に関する教育・学習指導案(題材,ねらい,本時の流れ,本時の展開)」の初等編,中等編,高等編」,そのまま使える【提示用の課題や教材の例】【子供用の記入できるワークシートの例】,さらに子供向けの【相談する時,言い出しにくい時の言葉例,悩みなどを打ち明ける時の言葉例】&大人向けの【受け止める側の気にかかる様子が見られた時の言葉例,相手の思いを受け止める時の言葉例,★言ってはいけない言葉例(がんばれ,命を粗末にするな,逃げてはダメだ,そのうちどうにかなるよ,ご両親や友達が悲しむよ,そんなことを考えちゃダメ)】と,実際的です。(30年前に,都教委に勤務していたことがあるが,「今の若い者は,いい仕事をするものだ!」と脱帽)