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書評:小島宏の気になる1冊その1040

吉田尚記著「没頭力―「なにかつまらない」を解決する技術-」(太田出版 本体:1111円)


 「没頭する」とは,広辞苑的に言えば「物事に熱注すること」「そのことに精神をつぎ込むこと」「はまり込むこと」ことである。スマホのゲームに熱中する,かけ事に全身全霊をつぎ込む,鉄道巡りにはまり込むなんて言うのはよくあることで,「没頭する」は身近な現象である。

 しかし,本書で著者の言う「没頭する」は,もっと前向きで,生産的で,創造的なことを指しているに違いない。

 表紙裏に,著者は,「没頭するための条件」として,「①ゴールとルールがはっきりしていて,フィードバックが早いこと。②目の前のことに100%集中していること。③無意識に体を動かしているこ(注:貧乏ゆすりではない!)。④自分というものをなくしているということ(注:独善的,独りよがり,自分勝手,自己流ということではない)。⑤時間の感覚がなくなっているということ(注:時間にルーズということではない)。⑥その場の状況を自分でコントロールできていること。⑦その行動自体が目的になっていること。⑧自分の持っているスキルと課題のバランスが取れていること(注:あまり高望みはしない)。」と,ネタ晴らしをした後で,では,具体的のどうしたらよいか,簡潔・明解に解説している。これなら,自分はすぐにでもできそうだと思わせてくれる。

 「はじめに―なんかつまらないと思っている人たちへ」,「1.没頭を定義する(ワクワクして目が覚めて夜満ち足りて寝る,没頭=フロー,好きなことをしないで生きているといえる?など11の視点から)」,「2.没頭の仕組み(没頭するための条件,没頭するために重要な3要素,没頭するためには自分ルールを作るべきなど7つの視点から)」,「3.没頭できる体を作る(絶望と希望と没頭,不安は没頭への入り口である,お母さんに勉強しなさいと言われるとやる気のなくなる問題など15の視点から)」,「4.没頭するテクニック(日常的にある小さな没頭,没頭は誰にでも開かれているなど4つの視点から)」,「5.没頭を味方につける(ラジオによって引きこもりから出てきたのは僕だ(注:著者),人は一人になると落ち込むなど12の視点から)」,「おわりに」。