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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その1041
三宮真智子著「メタ認知で<学ぶ力>を高める―認知心理学が解き明かす効果 (北大路書房 本体:1800円)
確かな学力(≒質の高い学力,今風に言えば,子どもに育みたい資質・能力の3つの柱ということになる)の育成に関連して,「自己評価」や「メタ認知」または「メタ認知力」ということが話題となることが多くなった。
しかし,繰り返しドリルによる知識・技能の習得,適用・応用問題に取り組ませて思考力・判断力・表現力の育成,花丸を連発する意欲付けという旧態依然としたことでは,「学び力」は付きにくいだろう。
そこで,認知心理学の専門家の著者の「認知心理学に基づく効果的な学習法」に学んで,子どもに「学び方」を身につけさせるための,教師の「教え方(授業)」を改善し,実行するヒントを得たい。
本書の内容は,「メタ認知」に初めて触れた人にも大変わかりやすい文章表現,構成になっている。校長先生,副校長・教頭先生,教務主任や研究主任などミドルリーダーに役立つ1冊である。
第1部「メタ認知を理解するための20のトピック」(認知とは何か,メタ認知とは何か,協同学習における他者とのやり取りとメタ認知,頭のよさ(知能)とメタ認知,意欲(動機付け)とメタ認知,メタ認知の問題点・留意点など)。
第2部「メタ認知的知識を学習と教育に生かす」Section1「意識・注意・知覚編(睡眠をとることが頭の働きをよくする,注意を向けなければ見れども見えず聞けども聞こえず,アンダーラインを活用で重要な点が一目でわかるなど11の提言)」,Section2「知識獲得・理解編(情報を目立たせると記憶に残りやすくなる,知識はネットワークの状態で蓄えられている,自分で考えたことや自分で選んだことは覚えやすいなど18の提言)」,Section3「思考・判断・問題解決編(アイデアの量と質とは比例する,粘り強く考えるとよいアイデアが出るなど17の提言)」,Section4「意欲・感情編(この学習は自分に役立つととらえることが意欲を高める,好きで学習していることにご褒美を出されると逆にやる気がなくなる,多少苦手な科目も頻繁に接していると親しみが湧くなど16の提言)」,Section5「他者との協働・コミュニケーション編(他者に教える(説明する)ことは理解を促進する,他者の考えに触れることが発想力を高める10の提言)」,Section6「行動・環境・時間管理編(大変そうな学習も少しずつ分ければ楽にできる,とりあえず学習を始めればそのまま続けられる,机が散らかっていると作業効率を左右するなど8つの提言)」。