ホーム > 教育研究所 > 気になる1冊 > 書評:小島宏の気になる1冊その1044

教育研究所

書評:小島宏の気になる1冊その1044

「総合教育技術2018年10月号」 (小学館 本体:1046円)


 西洋のことわざ(Partuniunt montes nascetur ridiculus mus.山々が産気づいて滑稽な二十日鼠が一匹生まれる )がもとになった「大山鳴動して鼠一匹」というのがある。ところが,「働き方改革」は,「大山鳴動して鼠一匹すら生まれず」の感がある。掛け声や綺麗ごとでは,一向に改革できないという好例であろう。

 本誌の特集によって,学校(教員)の働き方改革は前進するだろうか。一読して,鼠が出るか,象が出るか,ご自身で判断し,活用してほしい。

 総力大特集「やりがいと時間を生む5つの具体策」すなわち「学校の働き方改革最前線!」では,異常な長時間労働を改善するとして,次のような「道しるべ」を示している。

 PART1「学校働き方改革これまでの成果と課題」,これまでの議論を振り返る「学校における業務改善の動きは進むも根本的な改革にはまだ課題も山積」,中教審・働き方改革特別部会妹尾昌俊委員に聞く「各地での取り組みは進むも成果は道半ば更なる議論と意識改革が必要」。

 PART2「5つの事例に学ぶ改革の具体策」<事例①勤務時間の管理>「タイムカード導入や閉庁日設定などで教職員のタイムマネジメント向上を目指す」岐阜市教育委員会,<事例②部活動改革>「活動日を設定し,外部人材を生かす中学校部活動ガイドラインを策定」静岡市教育委員会,<事例③教職員の意識改革>「時間を有効に使う意識を高め時間と心のゆとりを生み出す」豊橋市立豊小学校,<事例④外部スタッフの活用>「副校長補佐などの外部人材活用で在校時間60時間超の教員ゼロをめざす」三鷹市教育委員会,<事例⑤ICTの活用>「教育委員会による普及・啓発でクラウド型校務支援システム導入を促進」北海道教育委員会。

 特集2は,大雨・大地震・施設の損壊「チームで備えるリスクマネジメントの鉄則」で,現状分析「短時間強(豪)雨,大雨の日数が増加し,全国で災害が起こりやすくなっている」,危機管理マニュアルをチェック「危機管理マニュアルの見直しを随時行い,校内の安全点検を徹底する必要がある」渡邊正樹,防災教育を見直す「抜き打ち型の実践的な避難訓練を行い自らの身を守る子供を育む」秦康範,避難所運営に備える「避難者の要望を聞くことから初めてユニークな『大臣制』で笑いをつくる」井出文雄
と,子どもの生命保護を最優先とする学校に必要な知見が詰まっている。自校の防災計画の見直しに役立ててほしい。