ホーム > 教育研究所 > 気になる1冊 > 書評:小島宏の気になる1冊その1048
教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その1048
北澤毅&間山広朗編著「<教師のメソドロジー>社会学的に教育実践を創るために」(北樹出版 本体:2100円)
本書は,小学校における教師の指導方法について,これまでとかく経験知に基づく職人技的な捉え方や習得をしてきたものを,社会学的に追究したものである。したがって,本書を一読すれば,明日からの指導法が飛躍的に高まるというものではなさそうである。しかし,「子供に質の高い教育(知・徳・体,資質能力の3つの柱としての知識技能・思考力判断力表現力等,学びに向かう力や人間性)を保証するするために,教師の指導力・授業力を高め続けようとする人にとっては,多くの示唆が得られるすぐれものである。が,ゆえに,「難しいことを平易に語る」のか,「優しいことを難しく語る」のかが問題になる。納得した部分を取り入れるというクリティカル・リーディングを勧める。
学級経営や各教科等の授業における指導方法(指導技術)は,指導理論やマニュアルをもとに基本を学び,それを教育実習や教職についてからの実践(実際の指導の体験の振り返り,校内研究や研修,先輩などの授業参観,管理職や先輩からの指導,)の積み上げによって会得していくものであろう。料理のレシピを元に試行錯誤(自分で工夫,ベテランの観察,名人からの指導)しながら一定レベルの自分流「旨い料理」にしていくことに通じるものがある。
序章「方法とは何か―方法の社会学序説」,第1章「園児から1年生への『飛躍』としての社会化」,第2章「『児童になること』と挙手ルール」,第3章「becomingとしての子ども/beingとしての子ども」,第4章「幼少連携における教育臨床社会学の有効性」,第5章「『主体的・対話的で深い学び』の観察可能性」,第6章「授業の中でつくられる『事実』と『学級』」,第7章「新任教員の『困難』をめぐる臨床研究の実践」,第8章「児童のトラブルをめぐるナラティヴ・アプローチ」,第9章「いじめ解決における『物語』構築実践」,第10章「学級における『見えない壁』と『外部者』」,終章「教員養成の現状と社会学の貢献可能性」で構成されている。