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書評:小島宏の気になる1冊その1051

小川陽子文「奇跡の山さよなら,名犬平治」(偕成社 本体:1165円)


 次々と起こるショックに,少女は耐えられず失語症になってしまい,自分の殻に閉じこもってしまった。
ところが,トラックから投げ出されて拾われた子犬が,ガイド犬「平治」として育てられ,少女・敦子と巡り合った。そして,登山客を案内し,多くの命を救い活躍した。この平治とのかかわりを通して,祖父清三との触れ合いを通して,敦子は徐々に心を開き,自分を,そして言葉を取り戻していくという感動の物語である。

「早春・悲しみの山」「沈黙の少女」「平治との絆」「ガイド犬平治」「ヤマの嵐になった母」「父の苦しみ深く」「嵐,奇跡の瞬間」「さよなら,平治」という流れで,写真と,簡潔な分が織りなして,敦子の自分を取り戻していく感動的プロセスが,犬平治の成長と活躍するガイドぶりが,祖父清三の敦子と平治への無私の愛情が,嫌でもホッコリと読む者の心を和ませてくれる。小学校高学年から,勿論大人も,しばし本書の世界に浸ってほしい。

 本書は,ノンフィクション酒井ひろ子著「ありがとう!山のガイド平治」偕成社を物語化した映画「奇跡の山―さよなら,名犬平治」(脚本・監督水島総)のストーリーブックである。小学校高学年から,勿論大人も心をホッコリとしてくれる1冊である。