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書評:小島宏の気になる1冊その1055

中江有里監修「学びやぶっく72「こくご」いくつ分かる?名作のイントロ」(明治書院 本体:1200円)


 クイズ番組に,名曲や流行歌などのイントロクイズがある。「覚えたい名言100」や「暗記しておきたい4字熟語」,「名作のあらすじ30冊」など,本書と同じようなものも多数出版されている。正直,「他人の〇ん〇しで相撲をとる」類の本と思い,友人のNさんから感想を求められても,しばらく読む気にならなかった。

 ところが,「はじめに」に目を通して,この本は「名作の出し当て」という体裁をとりながら,実は「ちょっと味見のできる,名作の読書案内カタログ」であるというくだりを目にして,やっと読む気になった。

 したがって,構成は,「名作のイントロ 作品名は?......」に続いて「ある作品のイントロを数行紹介」,そして「著者と作品をあてる」,裏ページに「作品名,著者と略歴,ネタ晴らしにならない程度の作品の概説」となっている。

 作品名や著者名を上げたら答えを教えた後のクイズみたいになってしまうので,ざっくり目次だけ紹介する。

 フロントエッセイ「名作のイントロにようこそ」,第1章「格差社会(7作品)」,第2章「生と性(6作品)」,第3章「見えないけど存在するもの・失敗の美学(7作品)」,第4章「家族(10作品)」,第5章「エゴイズム(5作品)」,第6章「女ごころ(5作品)」,第7章「生と死(6作品)」,第8章「いろいろ(24作品)」。監修者が自ら読んだ本で,しかも,その特徴に応じてジャンルに分けて分類したことは驚きで,その深さに脱帽である。(会社の偉い人から,「『気になる1冊』は文章だけでつまらない」と酷評されているようだが,本書は文章だけであるのに教えられることが多いので,一から学び直したいと思っている。いずれにしても,「読んでみてからの話」であるが・・・。)

 監修者は女優で,脚本家で,作家である。この次は,中江有里著の作品を読んでみようと思っている。