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書評:小島宏の気になる1冊その1056
鴻上尚史著「不死身の特攻兵―軍神はなぜ上官に反抗したか」(講談社現代文庫 本体:880円)
主人公の佐々木友次さんは「特攻隊振武寮 証言・帰還兵は地獄を見た」(講談社)で世に紹介された元特攻兵である。著者はこの本を読んで佐々木さんを知り,札幌の病院に5回も尋ねいろいろと話を伺い,平成29年に小説「青空に飛ぶ」(講談社)を世に問うた。さらに,「佐々木さんが何と戦い,何に苦しみ,何を拒否し,何を選んだか」を多くの日本人に知ってほしいと本書を著したという。(「はじめに」より)
ずっと以前に,「知覧特攻平和会館」を参観した折,当時の時代背景の中の出来事とは言え,若くして散っていった若者の心の奥と家族の言葉にはできない思いを推し量って,自然に涙が頬を伝わったのを忘れることはできない。
本書を読んで,佐々木さんのことを胸に深く刻むとともに,現在の世界の「きな臭い」状況に何かを感じ,平和の大切さを改めて確認した。
「はじめに」,第1章「帰ってきた特攻兵(生き残った特攻隊員,振武寮という地獄など6節)」,第2章「戦争のリアル(妻和子との別れ,特殊任務,9回目,無能なリーダーなど48節)」,第3章「2015年インタビュー(死なない強さ,佐々木さんを支えたものなど8節)」,第4章「特攻の実像(特攻隊とは何だったのか,精神主義の末路,特攻前夜の暗い瞳,当事者でない人間の怖さなど27節)」,「おわりに」と,素直に合掌した。