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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その1057
森口朗著「誰が『道徳』を殺すのか―徹底検証『特別の教科 道徳』」(新潮社 本体:760円)
小中学校に「道徳の時間」が設置されたのは昭和33年である。ところが,学校現場には趣旨が徹底せず反応は緩慢なものであった。そこで,教育課程審議会が昭和38年に「学校における道徳教育の充実方策」を答申し,それに基づいて,翌年から昭和41年にかけて文部省は「道徳の指導資料(1~3集)」を作成し,各学校に配布した。並行してこの頃から,大学の教員養成課程では「道徳教育の単位」が必修になった。さらに,昭和42年に文部省は「道徳指導の諸問題」を作成して,道徳指導の基本的考えを示し,道徳教育の質的向上を図った。それでも思うように進まなかった。
そこで文部省は,昭和43年に「小学校・学校における道徳教育」「中学校・学校における道徳教育」を作成し,国語,社会,算数・数学,理科,音楽,図画工作・美術,家庭・家庭技術,体育・保健体育,外国語(英語),特別活動・学校行事において,どのように道徳教育を進めるかを示した。これが現在の「各教科等における道徳教育」の進め方の源流になっている。
前置きが長すぎた。本書の表題はいささかショッキングなものであるが,読み進めると「どのようにしたら道徳教育,そしてその要となる道徳科を充実させることができるか」を追及しているものであることが分かる。
本書の内容構成は次のようになっていて,どのような内容をどのように学ばせたら,道徳教育及びその要となる道徳科の充実につながるか考える手がかりとすることができる。もちろん「答えのない道徳」なのだからクリティカル・リーディングなしに鵜呑みにすることには慎重でありたい。
「はじめに―ダメな老人,まともな若者」,第1章「道徳,教科化までの道」,第2章「道徳は何を教え,何を教えないのか」,第3章「道徳教育で「いじめ」はなくなるか」,第4章「各国の道徳教育はどうなっているか」,第5章「逃げない道徳教育が必要だ」,「あとがき―未来を見すえた道徳教育を」。