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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その1072
「総合教育技術2018年11月号」 (小学館 定価:1130円)
ある教育委員会の2020年から5年間の義務教育学校の教育基本方針の策定にかかわっている。学力を向上させたい。豊かな心を養いたい。健康・体力を維持・向上させたいという狙いはすぐさま満場一致で確認できた。ところが,それをどのように具体化し,実施し,実現するかについては,視点が定まらず,議論が収束していかない。その中でも,教職員(教員だけでなく,様々な立場や専門性でかかわる職員)の人材育成では,一致した。「教育は人なり」である。
今月号の総力大特集は,誠に時宜を得たもので「若手育成にベテラン活用・今求められる教師教育」である。教師教育をないがしろにしたがゆえに,教師が育っていないだけでなく,教育活動を充実させる教職員が育たず,学校運営をするミドルリーダーが育たず,学校経営を進めるリーダーが育っていないために,様々な歪の出ている教育委員会があるくらいである。
その内容は,PART1「若手急増,ベテラン大量退職にどう対処するか? 新学習指導要領時代に求められる教師教育の在り方とは?」<教員の年齢構成の変化とこれからの課題>「激変する教員年齢構成の中,求めれる資質・能力をどうはぐくむか」,<識者インタヴュー>「千々布敏弥:教師力向上は集団教育が鍵・学力上位県に学ぶ校内体制づくり」&「浜田博文:教員が主体的に考えることを重視し日常的に成長できる環境をつくる」,PART2「各種研修,OJT,若手とベテランの協働...若手を育てベテランを活かす!人財育成4つの具体策」<具体策>「学年副主任の導入,校務文章の見直しなど校長主導で組織力強化を図る」横浜市立都田西小&「ベテラン研修で学校のマネジメントを強化しコンプライアンス意識を高める」茨城県教育委員会&「それぞれの経験や習得分野を活かし若手もベテランも交えた学び合いの実施」みどり市立笠懸小&「若手教員育成推進員の活用で若手の授業運営などをサポート」千葉県教育庁と,学校も教育委員会も参考になる情報がぎっしりである。
特集2は,「2018年度全国学力調査結果・徹底分析」で,「結果分析と問題提起:小中学校ともに学力の底上げ傾向が続くS―P表の活用で今後の指導改善に期待」,「S-P表の活用:S-P表の分析は,学力向上のためのすべての取り組みのスタートになる」足立区教育委員会,「秋田県:トップレベルの学力を支える大きな柱は質の高い探究型授業と教師の共同研究」さいたま市教育委員会,「平成29年度保護者に対する調査結果分析:家庭の社会経済的背景(SES)だけで子供の学力が決まるわけではない」お茶の水女子大学教授浜野隆,「問題提起:先生たちは正しいことをしていると胸を張って言えますか?」上越教育大学教授赤坂真二と,本質的な「学力調査結果の活用」に甘辛の一石を投じていて,学ぶべき点が詰まっている。
そのほか,田中ウルヴェ京の巻頭インタヴュー,札幌市立屯田小学校長新保元康の緊急報告「北海道ブラックアウトにどう向き合ったか?」,連載「新学習指導要領に対応!今月の学校経営」なども,読みごたえがあった。