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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その1079
吉村作治著「古代遺跡を楽しむ本~ピラミットからナスカ地上絵まで、世界の文明を探検する~」 (PHP文庫 2000年6月刊)
学問には,実験・観察・実証に基づいて追究していくものと,古文書など文献や模擬実験(シミュレーション)の考証によって追究していくものがあるという。著者は考古学者であるから当然前者の立場であろう。
それなのに,多少の写真や図だけの文章で,本当に,「古代遺跡を楽しむことができる」のだろうかと,半信半疑で読み進めた。なんのことはない,著者自身が古代遺跡を楽しんだ「随想」だったのである。しかし,下手な観光案内よりも優れていて,「おもしろそうだな!」「行ってみたいな!」と,そんな気持ちになるかもしれない。
取り上げている古代遺跡は,第1章「古代エジプト編(ギザのピラミット,アレクサンドリアなど6つの遺跡)」,第2章「地中海世界編(トロイ,ローマなど6つの遺跡)」,第3章「東アジアからオリエントへ(万里の長城,西安,イスタンブールなど10の遺跡)」,第4章「メソアメリカとアンデス(マチュ・ピチュ,ナスカなど4つの遺跡)」,番外編「先史時代(タッシリ・ナジェール)」,26もの遺跡が取り上げられている。
ちなみに,私は,第1章の6か所はすべて「観光」で訪れたことがあり,当時を回想しながら読むことができた。第2章では,ローマ,ポンペイに行ったことがある。第3章は,万里の長城へ2回と西安は訪ねたことがあり,懐かしく読むことができた。また,第4章では,マチュ・ピチュをゆったり散策できたし,ナスカの地上絵は小型機で空から見下ろすことができた。チップを渡したら(降りるとき渡す習慣らしいが,乗るとき,普通よりほんの少し多く渡した)サービス満点で定期飛行よりやや時間も長く遠く,スリリングに案内してくれた(ような気がした)。