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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その1080
「児童心理2018年11月号」 (金子書房 定価:916円)
子どもだけに限らず大人も,お互いの気持ちが分かり合えず,トラブルになることが少なくない。学級経営で一番難しいのは,子ども同士が気持ちをわかり合い,好ましい人間関係を築けるかどうかである。スマホ時代,フェイスtoフェイスが少なくなっている現在だからこそ切実で難しい問題である。
今月号は,このあたりに焦点を当て,特集「ひとのきもちがわかる子に育てる」である。「活字で書いてあること」を1度読んだからと言って,「人の気持ちが分かる子」を育てることが簡単にできるとは思わない。でも,そうしたいとあれこれ模索している教師には,きっといくつかのヒントが得られるに違いないと思われる。
「進化し続けるAIと子どもの成長―教官力の形成をめぐる心理学からの提言」奈良女子大学特任教授麻生武,「とかく周囲との気持ちが通じない時代の中で―ディスコミュニケーションの克服」京都文化大学教授高石浩一,「人の気持ちを察する力の発達-相手の気持ち,自分の気持ちが理解できるようになる過程」東京学芸大学教授倉持清美,「相手の気持ちをわかりたい,自分をわかってほしいと思う心が生まれる時」東京都市大学教授井戸ゆかり,「人の気持ちがわかることと他を思いやる行動のつながり」こども教育宝仙大学教授石川悦子,「自分の気持ちも人の気持ちも大切にするやり取り―改めてアサーショントレーニングに学ぶ」立教大学学生相談所カウンセラー山中淑江,「共感がクライアントを支える―カウンセリングと共感」文教大学教授岡村達也と,多様な視点から新しい視点・考え・方策の得られる可能性が大きい。
続いて,「ネット上のコミュニケーションに生まれる問題―ネット依存外来から」国立病院機構久里浜医療センター主任心理療養法士三原聡子&院長樋口進,「子育てのアウトソーシングのよきバランスー世界の温かさを知る大切なかかわりの時期に」長野県立大学准教授金山美和子,「愛他心を育てる学校-たったひとつのやくそくを通して」大阪市立南港桜小学校長市場達郎,「仲間の中で心が成長する」大田区立蒲田小学校主幹教諭三浦晴代,「大人の気持ちが伝わらない子」心理学カウンセリング・ハートピット所長山口成子,「子供の気持ちをつかむために」北海道美瑛町立美瑛小学校長北島信,「子供の気持ちがわからない親―改めて親のする仕事を考える」糸魚川教育相談センター主任教育相談員横澤富士子,さらに「子供に読ませたい本―ブックリスト」菊池隆,「悲しみの体験を大事にする関り」近藤卓,「家族で育む共感性―他者感情理解と思いやり」佐藤宏平,「ボランティア体験を活かす」田中雅文,「心の理解をめぐる研究―心の理論の前後左右」篠原郁子と,充実している。