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教育研究所

書評:気になる1冊1093

未明編集室編「原民喜童話集」&「同別巻」(2冊組) 原民喜+蜂飼耳,竹原陽子,須藤岳史,田中美穂,外間隆史著(イニュニック 本体:2750円)


 原民喜(はらたみき)という名前にも,その作品にも初めて出会った。童話7編「山へ登った毬」「気絶人形」「うぐいす」「二つの頭」「誕生日」「もぐらとコスモス」「屋根の上」と,詩「ペンギン鳥の歌」が収録されている。

 どれも,私たちが一般的に思い描く童話というより,短文の随筆あるいは詩と思えるような作品である。でも,戦後の混乱時代にもかかわらず,夢と希望を与えてくれるような温かさで包んでくれるホッコリした作品であり,心が洗われるような気がした。

 また,巻頭の「屋根の上」の自筆の原稿も作者の人柄が滲み出ていて,作品同様のぬくもりを感じさせてくれる。

 代表作は,被爆体験を表現した「夏の花」だという。神田神保町の古本屋で探して読んでみるつもりである。

 また,別巻は,蜂飼耳「鈴に気づく日」,竹原陽子「原民喜童話と星の王子様」,須藤岳史「稀なる星よ,一羽の雲雀よ」,田中美穂「幻のみどり」,外間隆史「民喜の中の地下水―原民喜をたずねて―」&「想画集―原民喜に―」と,作品と作者と関連することを著者目線で語り,深く味わうことができる。(H&M)